従来は必ずしも明らかでは無かった幕末から明治初期にかけての草双紙を中心とする絵入小説の様相に関して、その全体像を概観できる程度までは資料を整備できた。今後の叩き台として明治期草双紙の書目を公開する予定である。 一方、十九世紀前半に出板された「読本」に関しては、フランスのギメ東洋美術館で読本の口絵挿絵だけを蒐めて合冊した大量の資料を見出すことが出来、十九世紀末に貸本屋での役割を終えた絵入読本の末路の一端を明らかに出来た。欧羅巴で沸き起こったジャポニズムの隆興に乗じて、絵入読本の絵だけが輸出されたものであると思われる。 つまり日本十九世紀小説は絵入であったが故に国外で享受されるに至ったのである。
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