研究課題/領域番号 |
25370219
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
小林 明子 (小島 明子) 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (60279015)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 栄花物語 / 歴史物語 / 富岡本 / 摂関家 / 藤原道長 / 藤原頼通 / 禎子内親王 / 後三条天皇 |
研究概要 |
『栄花物語』の本文には、正編・続編四十巻構成の「古本系統」「流布本系統」に対して、正編のみの三十巻からなる「異本系統」がある。後者の系統は、大きくみれば語・句の単位でも簡略化の傾向にあるが、逆に巻二十七~三十では大きな本文増補がなされる。 今年度は「異本系統」の代表的な本文である富岡本の異同状況を巻二十七~三十を中心に調査した。その結果、増補されるのは藤原道長・頼通に関する記事である割合が高く、かつ道長後継者として頼通が称揚され、「春宮(のちの後朱雀天皇)に入侍する禎子内親王を懇切に後見する二人」という他本でも読み取れる人物造型が、富岡本ではより一層強調される叙述傾向を抽出することができた。 また富岡本の増補については従来、二段階が想定され、第一次は後冷泉天皇の時代との説が出されていたが、上述の分析に加えて当時の歴史的状況を考え合わせることにより、そこには疑義が生じてきた。第一次増補の時期は、禎子と後朱雀の間に生まれた尊仁が不遇の春宮時代を経て後三条天皇として登極して後、その皇子貞仁に摂関家嫡流が娘を入侍させ、再び天皇家と協調路線をとる時期である蓋然性が高いことを検証した。これらの点は、富岡本の祖本が成立した歴史的・文化的背景を明らかにする糸口を見出した意義があると考えられる。 以上の分析を「『栄花物語』富岡本増補記事の検討―巻二十七~三十に着目して―」の論文となし、日本文学協会『日本文学』平成26年6月号の掲載が決定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『栄花物語』「異本系統」の富岡本に関して、大きな増補本文の分析をなし、それを踏まえ祖本の成立年代の比定を行い、今年度の研究計画で予定した部分についてはほぼ調査を完了することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
『栄花物語』「異本系統」の富岡本に関して、さらに細部にわたる本文の異同状況を押さえ、かつ勘物の検討を行い、富岡本祖本の作者圏を絞り込めるように調査・分析を進める。
|