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2014 年度 実施状況報告書

博覧会の時代と泉鏡花

研究課題

研究課題/領域番号 25370222
研究機関藤女子大学

研究代表者

種田 和加子  藤女子大学, 文学部, 教授 (90171868)

研究分担者 乾 淑子  東海大学, 国際文化学部, 教授 (40183008)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード紋様 / 金工 / ウイーン万博 / ニュルベルク金工博 / 謡曲 / イコノロジー / 泉清次 / 泉鏡花
研究実績の概要

泉清次の博覧会に関する仕事の背景をさぐることと、鏡花作品との関係は「物語る紋様」という小論文にまとめ、「アナホリッシュ国文学」(2014年5月、泉鏡花特集)に発表した。その後、「図案」(模様)とは何か、また、それがいかなる問題を投げかけるかという根本的な問いに立ち返り、その点に絞って、調査研究をすすめてきた。昨年は、泉清次とウイーン万博の関係を手がかりとなる図版をもとに「金沢銅器製造元記」の記述と対照させ、清次が「海人ノ玉採リ図」が象嵌された石菖鉢を作ったことが確定できた。また、よく引用されてきた「米沢文書」には、清次の師匠といわれる水野源六、山尾次六についての記述があるが、これは、米沢清左衛左門の最晩年の記憶によるもので、この文書に絶大の信頼をおくには疑問が生じる箇所が多々ある。この文書に書かれたとおり清次が7代水野源六、のち山尾次六に師事したという記述それ自体を再考すべきであるということになる。以上のことは、2度にわたる金沢市立図書館での調査による。
なお、昨年はウイーン万博140年記念の展示がウイーンミュウジアムであり、現地にての見学を行い、図録なども役立てている。
2013年にニュルンベルクのゲルマンナショナルミュウジアム付属図書館で調査し資料を収集したが、それらドイツ語の資料の翻訳はほぼ完成し、その資料を丹念に読みこむ段階に入っている。その結果、とくにこの博覧会で注目された「竜神」像は、謡曲「竹生島」の「竜神」をふまえており、謡曲の「絵画的応用」という観点が浮上した。これはウイーン万博における「海人」の紋様の問題と直結しており、考察をすすめている。


現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ニュルンベルク金工博において、泉清次の出展品や金沢の金工家の出展品は文献上は特定できた。ただし、1885年当時のニュルンベルク工業美術館が現存していないため、現物の特定は困難である。この点はさらに探究することにして、金沢の「泉鏡花記念館」の協力のもとに、清次の作品をさがすことにし、昨年1月1日発行の「北國新聞」を通じて市民に呼びかけた。
それと連動して、清次と鏡花の関係を「紋様」への志向というところにみる、という一文を同新聞に寄稿した。また、ウイーン万博やニュルンベルク金工博を「謡曲」の意匠という観点からみることの意義を見出せたことは、予想外の収穫である。つまり、鏡花の「能」への深い理解は母親の側からの影響はよく論じられるが、父親=職人の側からの影響も濃厚であることは、鏡花作品を読むうえでも重要であり、作品読解の方向がさらに開かれたことを特に強調したい。

今後の研究の推進方策

きたる6月14日、日本比較文学会の大会において、「明治初期の金工作品への謡曲の絵画的応用-ウイーン万博とニュルンベク金工万国博覧会」と題して、口頭発表を行う予定であり、これまで蓄積してきた金工と紋様の問題を花器の象嵌の意匠や「竜神」像の具体的な分析を通じて深める。枠組みとしてはジャポニスム研究となり、どちらかといえば、陶磁器や七宝に偏った分析から金工へと目を移すという点で意義あるものと考える。また、7月には泉鏡花研究会にて、泉清次について本研究課題で明らかになったこと、それが、鏡花研究にいかにかかわるかについて、発表する。そのうえで、これらを論文としてまとめる予定である。その際フィラデルフィア万博のコレクションを多く所蔵するウヲルターズ・アートギャラリー(ボリチモア)のコレクションも大いに必要となるので渡米計画をたてている。

次年度使用額が生じた理由

前年度までは謝金、旅費などに出費を要したため、物品(書籍費など)は個人研究費などで支出した。

次年度使用額の使用計画

博覧会関係資料(図録、資料のコピー、図書費)として使用したい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 物語る紋様ー泉鏡花と泉清次2014

    • 著者名/発表者名
      種田和加子
    • 雑誌名

      「アナホリッシュ国文学」

      巻: 6 ページ: 4-13

  • [雑誌論文] 泉鏡花と彫金師の父清次2014

    • 著者名/発表者名
      種田和加子
    • 雑誌名

      「北國新聞」

      巻: 43766 ページ: 13

  • [学会発表] 金工家泉清次についてー明治初期博覧会との関連において考察する2015

    • 著者名/発表者名
      種田和加子
    • 学会等名
      泉鏡花研究会
    • 発表場所
      昭和女子大学
    • 年月日
      2015-07-25
  • [学会発表] 明治初期の金工作品への謡曲の絵画的応用、ウイーン万博とニュルンベルク金工万国博覧会2015

    • 著者名/発表者名
      種田和加子
    • 学会等名
      日本比較文学会
    • 発表場所
      立命館大学
    • 年月日
      2015-06-13 – 2015-06-14

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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