夏目漱石の美術への関心、その文芸と美術との関わりについては、既に多くの研究があるが、その前提となる調査は十分とは言いがたい状況であった。研究代表者は、漱石文庫の美術雑誌“The Studio”等に見られる、漱石自身によるものと推測される剥ぎ取りの跡に注目し、そこにあったはずの絵、記事等を知ることによって、漱石の美術、特に西洋美術への関心の内実を実証的に明らかにすることができると考えた。調査の結果、Romilly Fedden等の多くの画家、芸術家や芸術思潮への関心がうかがえることが判明し、漱石の文芸の背景にあった美術への関心の多様さ、漱石の芸術についての視野の広さが明らかになった。
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