研究課題/領域番号 |
25370228
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
井上 明芳 國學院大學, 文学部, 准教授 (90614264)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 森敦 / 月山 / 草稿 / 現地調査 |
研究概要 |
本年度は、当初の計画通り森家所蔵の森敦自筆資料について、整理分類を行った。そのうち、森敦文学にとって最重要作品の一つ「月山」の草稿について、すべての整理分類が終わったため、まず、それらを翻刻し公開することを目指した。初公開となる「月山」草稿については、大別して5種類の草稿に分けられ、5種類それぞれについて、執筆順を調査し推定した上で、「月山」生成過程を明らかにできるように配置した報告書を作成した。最終形である単行本「月山」に成るまでの過程を示し得たことは、基礎的な資料として、森敦文学研究に貢献できるであろう。 また、その生成過程は、月山注連寺に籠った森敦の実体験に基づいていることがわかっているため、資料の価値をさらに高めるべく、現地調査も行った。得られた実地資料を地図や方言資料としてまとめたり注釈とすることで、単なる翻刻資料に留まらず、「月山」を執筆生成の側面と現地調査の側面とから総合的に検討できるようにしている。現地調査も本研究で体系的にまとめることができ、「月山」研究の基礎的な資料になっているとともに、作品の舞台である山形県鶴岡市七五三掛地区の歴史としても意義がある。 さらに、「月山」翻刻資料が森敦文学の他作品との関連性も探究し、本研究としての一定の方向性を示すことで、草稿執筆時の森敦が他作品をも構想していたことの一端を明らかにしている。最後に森富子氏の多大なご協力のもと、「月山」執筆時を特化させた森敦年譜も作成した。 以上のような複数のアプローチを通じて、「月山」の総合的な研究を研究成果報告書として刊行し、森敦文学研究へ寄与している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では、森家所蔵の森敦自筆資料の整理分類をすることであり、それについてはおおむね順調に進んでいる。その上で、森文学の最重要作品の一つ「月山」の草稿の分類を終わらせ、目録化した上で、草稿の執筆順や内容の精査なども行った。さらに、草稿執筆に深く関わる森敦の実際の体験について、現地調査も行い、草稿の生成過程の側面と内容的な調査とを合わせて、翻刻公開することができている点で、当初の計画以上に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
森敦「月山」草稿に関しては、すでにまとめた公開をしたため、今後は森家所蔵の森敦自筆資料について、全体的な目録作成を行い、全体像を示すことを目指す。とりわけ、現在「断簡」として分類している資料を精査し、できるかぎり、小説や評論、随筆と関連づけていく予定である。そのために、デジタル画像化できていない自筆資料を撮影することを最優先としたい。 研究の遂行上の問題としては、撮影機器を増やすなどして、作業速度を上げることが必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
おおむね計画通りの支出であったが、残金として616円余った。申請した購入機器等の予算や人件費等の差額によって少しずつ残った金額である。 使用計画としては、できる限り緻密に支出金額を割り出した上で、人件費や機器等を購入し、有効に活用したい。
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