本年度は本課題研究の最終年度に当たる。そのため、当初の目的通り、森家所蔵森敦自筆資料の目録の完成を目指した。これまでに自筆資料のデジタル撮影をすべて終えており、それに基づいて精査、分類をすすめた。小説類、エッセイ類の分類は比較的困難はなかったが、メモ類や紙片など、分類が困難な資料も多数存在した。森富子氏に助言を仰ぎ、初出資料については森家所蔵の資料の寄贈を賜り、それに当たることで分類が可能になった。とくに書籍の推薦パンフレットや社内報など、国会図書館をはじめとする公的機関にさえ納められていない資料を直に見ることができたため、分類をいっそう精しくすることができた。 また、新聞に発表された文章については、各地方紙にも後日掲載されるなどしており、『森敦全集』収録の年譜にもない資料が多数発見された。森家が所蔵していない地方紙の場合は、それぞれ直接問い合わせるなどしてできる限り収集した。これらは雑誌に関しても同様である。こうした作業を通じてさらに発見された森敦の文章や推薦・宣伝文があり、初出資料一覧を充実させることができた。 11月まで分類と精査をすすめ、12月に入り目録の最終的なまとめに入った。題名を『森敦資料目録』とし、「1、小説・詩」「2、評論・エッセイ」「3、対談・インタビュー・講話」「4、ノート」「5、覚書」「6、手紙」「7、原典」「8、参考資料・視聴覚資料」「9、書籍」「10、遺品」に加え、「森敦作品一覧」を加えた。さらに森富子氏に序文をいただき、研究代表者の研究概要と経緯、解説を付した。以上は、初公開となる情報であり、『森敦全集』所収の書誌をさらに詳細にした内容となっている。ただし、刊行に関しては、自筆資料についての情報を含むため、著作権上の配慮を要したため、著作権継承者森富子氏の意向を尊重した。
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