本研究の目的は、①戦国期の島津氏が育んでいった文芸環境の実態把握、②戦国期の状況が、近世薩摩藩の諸文化へと再編される様相の具体的把握という二点である。これを達成するため、鹿児島県歴史資料センター黎明館・鹿児島県立図書館等の諸機関に赴き、所蔵資料の調査を行うとともに、歴代の島津家当主や新納・樺山・山田家等の人々の文芸活動に関する資料群の分析に取り組んだ。その成果として、これまで知られていなかった中世文芸(とくに幸若舞曲等の語り物文芸)の受容や地域社会への伝播、島津家の歴史認識の形成と展開に関する新事実を発見し、紹介することができた。
|