研究課題/領域番号 |
25370238
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
平澤 信一 明星大学, 教育学部, 教授 (20270316)
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研究分担者 |
岡村 民夫 法政大学, 国際文化学部, 教授 (00297988)
栗原 敦 実践女子大学, 文学部, 教授 (40086822)
杉浦 静 大妻女子大学, 文学部, 教授 (50140108)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宮沢賢治 / 風の又三郎 / 草稿研究 |
研究実績の概要 |
昨年度の『風の又三郎』草稿表面の複写に続き、裏面およびメモの複写を終えた。予定よりも時間がかかったが、これでカラー版複写稿がすべて揃ったことになり、それぞれの研究分担者による読み解き作業が進められている。カラー版複写稿が揃って、改めてわかったことは、昨年度、報告したモノクロ版マイクロフィルムの今日においても失われない重要性に加え、校本全集・新校本全集編纂者である天沢退二郎、入沢康夫が残した、筆記具の種類などを記した、これもモノクロ版の草稿コピーの価値である。カラーコピーでもわからないペンの種類の判別などまでが書き込まれてあり、これを受け継ぐことの重要性が再確認された。研究代表者は、『風の又三郎』の一部についてだけ、このコピーを譲り受けたが、他の作品についても、保存が望まれる。校本全集の編纂方針を決める際に、どのような全集が参照されたのかについても、入沢氏からご教示を得た。大岡昇平は、校本全集の宣伝用パンフレットに、推薦文を寄せているが、それは大岡の『中原中也全集』『定本富永太郎詩集』のテキスト・クリティックから、校本全集が、その異稿の収録方針を受けついだためである。研究分担者の杉浦静は科研費課題「富永太郎直筆原稿の画像データベース化による文学テキストの生成研究」を2014年3月に完了したが、これにより杉浦が次代の宮沢賢治全集のあるべき姿を検討する一環としての富永研究と本研究が、ようやく接続された。校本、新校本と、活字による草稿の開示では、最前線にあった宮沢賢治の草稿研究が、DVD版の太宰治の草稿公開などに、やや遅れを取っていることも改めて考え直さなければならない。2015年3月には、「九月八日」の章を中心として、『風の又三郎』自筆稿第60葉のモノクロ写真版を含む「宮沢賢治『風の又三郎』の場所Ⅱ」を『明星大学教育学部研究紀要5』に発表した。これは、WEB上でも公開される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多量の草稿を複写したことによる複写機の不具合。また宮沢賢治記念館が、30年ぶりの展示リニューアルを行うため、2014年12月から2015年4月まで休館したため、作業に遅れが出た。
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今後の研究の推進方策 |
草稿研究班と詩的評価班に分かれて、作業を持続する。草稿研究班のひとつの目標であった新流布本文の作成については、研究開始以前に、岩波文庫のみを底本として提供されていた青空文庫が、例えば『銀河鉄道の夜』などについては、新潮文庫等、最新の本文を併せて提供し、複数の底本を採用し始めたため、岩波文庫の誤りを正して、新しい本文を発信するという当初の目的は、必ずしも絶対的ではなくなった。そうしたなか、従来の賢治作品の読みを深める研究の進展が更に要請されると思われるが、これについては詩人の野村喜和夫、吉田文憲らを中心とする詩的評価班での持続的な討議をまとめたものとして、研究期間の最終年度である2015年度に、論文集を刊行の予定である。賢治テキストを驚くような細部まで公開する校本全集の刊行以後、その校異の読み解きの煩雑さなどから、却って詩人など実作者による賢治論が、あまり発表されずにきたが、研究代表者の参加によって、賢治テキストの様々な問題をわかりやすく共有することで、しかもなお詩的想像力に裏打ちされた詩人たちの賢治論集を刊行の予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年12月から2015年4月まで宮沢賢治記念館が休館したため、旅費の使用が、当初予定よりも減ることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
宮沢賢治記念館行きの回数を増やす。または、滞在期間を長くする。
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