研究課題/領域番号 |
25370238
|
研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
平澤 信一 明星大学, 教育学部, 教授 (20270316)
|
研究分担者 |
岡村 民夫 法政大学, 国際文化学部, 教授 (00297988)
栗原 敦 実践女子大学, 文学部, 教授 (40086822)
杉浦 静 大妻女子大学, 文学部, 教授 (50140108)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 宮沢賢治 / 風の又三郎 / 草稿研究 / 児童文学 / 日本文学 |
研究実績の概要 |
昨年度からの予定通り、杉中昌樹氏との共同編集で、詩的評価班による研究報告書の刊行を行った。非売品であり、書店などにも並ばないので、内容をやや詳しく紹介しておけば、冊子名は『詩の練習-宮沢賢治特集』で2015年12月15日明星大学教育学部平澤信一研究室発行。日本学術振興会科学研究費補助金:課題番号25370238報告書と明記してある。 巻頭に天沢退二郎「「風の又三郎」の謎にせまる-さいかち淵はなぜかくも深きや-」、順に、入沢康夫「研究漫筆番外篇 語彙辞典へのささやかな寄与、二題」、野村喜和夫「対話-アレンジ宮澤賢治」、生野毅「〈そら〉の封印 〈空〉の裂け目-ブドリが本当に遺したもの-」、廿楽順治「怪獣(みやざわの)」、季村敏夫「たける野の風と空」、田中綾「宮沢賢治と中原中也-福島泰樹の中也論を補助線に」、中本道代「オホーツク晩歌に応える」、暁方ミセイ「賢治-ユングメモ」、浜田優「生命と幽霊-「心象スケッチ」をめぐって」、亀井志乃「宮沢賢治と創作-ふと訪れる想念に形を与える営み-」、吉田文憲×平澤信一「「家族」と「鳥」というモチーフ-「春と修羅」から『銀河鉄道の夜』の方へ-」、杉中昌樹「宮沢賢治と書くことの情熱」、平澤信一「あとがき」。これらはおよそ二箇月に一回、行われてきた研究会の成果でもある。 天沢の論文には、行間筆写稿における綴じ穴の発見など、新校本全集以降の最新の研究成果が織り込まれ、「風の又三郎」第四六葉から第五○葉の複写稿が掲載されている。 いずれも初めて活字になる原稿である。 平澤は同研究会において、2015.12.12に「「風野又三郎」と「風の又三郎」のあいだ」という草稿生成論的研究の発表を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
草稿研究については、研究分担者の杉浦静が宮沢賢治研究会第282回例会(2015.8.1)で、『風野又三郎』構想メモの成立について、研究発表を行った。具体的には、1.「童話 風野又三郎梗概」メモ(「青木大学士の野宿」の転用)。2.MEMO印手帳メモ(昭和6年の春頃)。3.「風野又三郎。」メモ(小型セピア罫四百字詰原稿用紙B)。4.兄妹像手帳メモ(昭和6年9月2日)。の検討である。 また、2016.3.20には、平澤のコーディネートにより、大妻女子大学において、宮沢賢治学会春季セミナーin東京を行い、詩人の天沢退二郎、吉田文憲と共に「『風の又三郎』とはだれか」という公開シンポジウムを行った。150名近い参加者が集まり、「風の又三郎」第一葉、第二葉、第一四葉、第二一葉、第四三葉、「風野又三郎」清書後手入稿第三一葉の複写稿が資料として配布され、本文校訂について検討された。 宮沢賢治学会のセミナーによる「風の又三郎」の検討は、研究計画では、夏季特設セミナーで行う予定であったが、宮沢賢治記念館の30年振りのリニューアルなどに押され、この時期の開催となった。
|
今後の研究の推進方策 |
主として詩的評価班を中心に活動した三年目の本計画ではあるが、研究期間の延長により、もう一度、テクスト研究に戻る機会を得た。ただし、筑摩書房から、新字新仮名の新たな作品集が、研究分担者の栗原敦、杉浦静によって刊行される可能性があり、本計画によって作品集を作るか、研究論文の範囲で留めておくかについては、更なる検討の必要に迫られた。いずれにせよ、本年は、宮沢賢治生誕120年にあたるので、8月末には岩手県花巻市で国際研究大会も予定されているし、学会誌からの研究展望の依頼も来ている。本計画「宮沢賢治の草稿生成論的研究-『風の又三郎』を中心に-」は、あくまでも草稿生成論的研究に主眼があり、『風の又三郎』が選ばれたのは、その問題が大きいからであって、各作品の新字新仮名本文が登場することは、歓迎すべきことである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
宮沢賢治記念館の30年振りの全面的リニューアル作業などに押されて、研究計画に遅れが出た。
|
次年度使用額の使用計画 |
資料調査を含む宮沢賢治生誕120周年記念国際研究大会(岩手県花巻市)の参加費用とテクスト研究の報告書の作成。
|
備考 |
『明星大学教育学部研究紀要』創刊号に「宮沢賢治『風の又三郎』の場所」、第5号に「宮沢賢治『風の又三郎』の場所Ⅱ」を掲載。
|