研究課題/領域番号 |
25370238
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
平澤 信一 明星大学, 教育学部, 教授 (20270316)
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研究分担者 |
岡村 民夫 法政大学, 国際文化学部, 教授 (00297988)
栗原 敦 実践女子大学, 文学部, 教授 (40086822)
杉浦 静 大妻女子大学, 文学部, 教授 (50140108)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宮沢賢治 / 『風の又三郎』 / 草稿研究 / 児童文学 |
研究実績の概要 |
西暦二〇一六年は、宮沢賢治の生誕百二十年であった。様々な企画出版が話題となり、筆者もある図書を刊行の予定であったが、それは実現しなかった。ひとつ、科研費の成果として喜ばしかったのは、二〇一六年の中頃から筑摩書房が新字新仮名による『宮沢賢治コレクション』全10巻の刊行を模索し出し、研究分担者の栗原敦と杉浦静が、その編纂委員に任じられたことであった。そこには当然、私たちが研究を続けてきた『風の又三郎』が含まれるのであって(しかも第一巻配本)、『風の又三郎』の新字新仮名テキストを科研費で刊行するという、研究計画当初の目的は、出版社による刊行という大きな成果をもたらしたのであった。 八月には岩手県花巻市で国際研究大会が催された。そこで記念館の学芸員に依頼したのは、賢治の草稿上の落書きの使用許可であった。賢治全集は文字テキストとしては、ほとんど完璧なものだが、欄外に描かれた落書きまでは伝えきれていない。宮沢賢治学会は、十一月二十六日に広島県福山市で、宮沢賢治学会地方セミナーを行ない、筆者はこれに参加して、賢治の草稿に遺された落書きについて発表し、その内容を明治学院大学の『言語文化』第34号に寄稿した。この誌面には、研究分担者の栗原敦、杉浦静も参加しており、これで、四年間続いた科研費の仕事から退くこととなる。宮沢賢治『風の又三郎』の新字新仮名本文の実現は、十二月刊行の『宮沢賢治コレクション』によって果たされたのである。しかし、この度の大きな課題であった「三年生」の問題は未だ解決していない。ただ、そのようにして数々の論文を呼び起こすことが、逆に、その魅惑ともなっており、作品に限らず批評をお互いに享受し合うことが、宮沢賢治の新たな可能性として垣間見えたようにも思えたのである。そして何よりも、この度の新字新仮名コレクション刊行の気運をもたらしたのは本研究であり、その成果を自負するものである。
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