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2014 年度 実施状況報告書

1950-60年代日本文学の英語訳に関する基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 25370240
研究機関早稲田大学

研究代表者

榊原 理智  早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (00313825)

研究分担者 十重田 裕一  早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40237053)
キャンベル ロバート  東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50210844)
塩野 加織  早稲田大学, 文学学術院, 助手 (80647280)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード50年代60年代 / 日本文学 / 英語訳 / ノーベル文学賞 / 国際情報交換
研究実績の概要

本研究では、1950年代から1960年代にかけて、日本の近代文学が世界の主要な文学となっていく過程を、英語への翻訳の生産・出版・流通に焦点を宛てながら歴史的に研究することを目的としていた。本研究の二年目となる今年度は、前年度の資料蒐集をもとにして幾つかの成果をあげた。まず、2014年7月29日に、海外からカリフォルニア大学ロサンジェルス校のマイケル・エメリック教授、国内から上智大学の河野至恩教授を招いて、研究代表者榊原と、研究分担者キャンベル、十重田、塩野の全員が参加し「<世界>を通して見る日本文学・日本文学研究」と題した国際ワークショップを行った。また、研究代表者の榊原が、1950年代の近代日本文学の翻訳に携わった北米の商業出版社がどのように冷戦下の政治体制と関わりながら、翻訳を通して日本のイメージを作り出していったかに関する発表を、タイ王国チュラロンコーン大学で行った。さらに、榊原は占領期小説における翻訳の問題を理論的に考察した論文を、研究分担者の十重田は、翻訳が大きな役割を果たす占領期のメデイア検閲に関する研究を、『検閲の帝国――文化の統制と再生産』(紅野謙介他編 新曜社、2014年)に寄稿した。十重田はその成果を日本とフランスにおいて研究発表と講演の形で発表している。引き続き基礎資料の発掘・収集・整理にも務め、多くの収穫があった。代表者榊原の統括の下、研究分担者の塩野が米国コロンビア大学図書館に所蔵されている、50年代の中心的翻訳者であるドナルド・キーンの出版社との書簡等の資料の予備調査を行い、今年度により本格的調査ができるように準備をした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請時には、平成25年度を基礎資料の発掘・収集の時期と位置づけ、①1950年代60年代において英語で翻訳出版された作品・作家等についての資料を収集調査し、整理とデータ化を行うこと、②当該時期に翻訳出版に携わった関係者らに聞き取り調査を行うこととし、次年度である26年度に、ノーベル文学賞の選考過程の研究を行うとしていた。しかし、1958年から62年の選考過程に関する資料を入手できたため、次年度の中心的段階であるノーベル賞選考過程と、日本人作家候補の研究が計画より先行する形となった。
今年度は、当初初年度の目的としていた1950年代60年代における日本文学の英語翻訳に関する研究が大きく前進した。国際ワークショップでの日本文学と世界文学の関わりについての生産的な議論が行われたほか、本格的な論文化には至っていないが、冷戦期における翻訳者と出版社の関係、編集者の意図等に関する新たな事実を発掘しつつあり、日本人作家がノーベル賞候補として考慮されるに至る前段階にも、さまざまな動きがあることが確認された。この「前段階」の研究によって、初年度に行ったノーベル賞選考過程の研究がより意味を持ってきたと考えている。
また、前年度の報告でも述べたように、資料を蓄積した成果として、著名な翻訳者であるドナルド・キーンやエドワード・サイデンステッカー以外にも、日本国内における日本文学の英語訳の動きが活発であったことを確認しており、それらが対象とする読者や販売のルート、編集者の意図等に関しても、論文化する準備をしている。

今後の研究の推進方策

最終年度となる27年度は、初年度に行ったノーベル賞選考過程および候補作家の研究と、26年度の成果である、50年代60年代の翻訳と英語圏メディアの状況の研究とを結び合わせていく段階であると考える。
前年度に引き続いて、資料蒐集・整理を継続するほか、その資料をもとに、1950年代60年代の日本近代文学の英語訳ブーム支えた出版社・翻訳者・作家へのインタビューの準備を積極的に進めたい。それによって、翻訳対象となった文学作品についてa.誰の/b.どのような意図で/c.いかなる作品が取捨選択されたのか/d.どのような編集方法や販売戦略があったのか/e.より大きな政治・社会状況との関わりがどのような形であったのか、等の検証を具体的に行い、単独の作家研究の観点では捉えることのできない、日本近代文学の世界的流通の内実を明らかにしたいと考えている。調査体制としては、研究代表者の榊原が全体統括をつとめ、事前の調査交渉・インタビュー・文字起こし・調査結果の分析までの一連のプロセスを、研究分担者であるキャンベル・十重田・塩野を加えた4名で適宜分担連携する。この調査の成果は、内外の研究者に向けて、学会やワークショップ等で発表を行うとともに、研究者を招聘して日本近代文学の英語訳およびノーベル賞選考過程、具体的な翻訳作品の精読、日本近代文学の世界文学への寄与に関するワークショップを行い、研究代表者・研究分担者それぞれの論文を含めたブックレットの発行に向けて準備を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

予定では、スウェーデン・アカデミーの現地調査を行い、さらなるノーベル賞選考過程の新資料の発掘に勤めるほか、1950年代60年代の日本近代文学の英語訳ブーム支えた出版社・翻訳者・作家へのインタビューの準備を積極的に進めたいと考え、国内でのインタビューのための事前調査用資料、実際のインタビュー・文字起こしのための機器および旅費に使用するということであった。しかし近年、ノーベル賞選考過程に関する情報がウェブ等でも比較的容易に入手できるようになったため、平成26年度における海外出張は主として研究の成果発表のためのものとなった。

次年度使用額の使用計画

前年度に引き続き、1950年代60年代の日本近代文学の英語訳に関する資料収集を、米国を中心に行うほか、聞き取り調査のための機器や出張旅費に使用する。また、研究成果の発表のための学会参加やワークショップ開催のための費用、ブックレット制作のための費用にも使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [学会発表] Media Regulations and the Battle Over Literary Expressions in 1940s Japan2014

    • 著者名/発表者名
      十重田裕一
    • 学会等名
      招待講演
    • 発表場所
      アメリカ合衆国 カリフォルニア大学ロサンジェルス校
    • 年月日
      2014-11-17
    • 招待講演
  • [学会発表] 占領期言語統制下の創作と出版活動2014

    • 著者名/発表者名
      十重田裕一
    • 学会等名
      Colloque international Université Paris Diderot
    • 発表場所
      フランス ディドロパリ大学
    • 年月日
      2014-09-18
  • [学会発表] 翻訳の政治学 1950年代日本近代文学の英語訳をめぐって2014

    • 著者名/発表者名
      榊原理智
    • 学会等名
      タイ国日本研究国際シンポジウム2014
    • 発表場所
      タイ チュラロンコーン大学
    • 年月日
      2014-08-26
  • [図書] 『近代文学草稿・原稿研究事典』2015

    • 著者名/発表者名
      十重田裕一 (項目執筆と論文寄稿)
    • 総ページ数
      403
    • 出版者
      八木書点
  • [図書] 『帝国の検閲――文化の統制と再生産』2014

    • 著者名/発表者名
      十重田裕一、榊原理智 (それぞれ論文を寄稿)
    • 総ページ数
      482ページ
    • 出版者
      新曜社

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公開日: 2016-05-27  

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