研究課題/領域番号 |
25370241
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田渕 句美子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80222123)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 日本古典文学 / 物語文学 / 和歌文学 / 女性教育 / 女房文学 / 教育メディア / 源氏物語 / 無名草子 |
研究実績の概要 |
平安期から鎌倉期にかけての女房文学、物語文学、和歌文学を、女性教育メディアという観点で全面的に見直しをかけ、その役割と実態を探り、そもそも教育という役割がこれらの文学の作品形成に根本的にどのような力を及ぼしていたのかを、具体的に明らかにするのが本研究の目的である。そのために、『源氏物語』などの物語文学、物語を評論している『無名草子』などの評論・随筆、物語の作中和歌、女訓書の類などから、重要なものを取り上げて、新たな視点での文学史構築を試みたい。 本研究の当該年度(平成26年度)においては、『無名草子』に含まれる『源氏物語』の和歌について具体的な検討を行い、新たな観点で『無名草子』の和歌を分析して論じた。すなわち、『無名草子』所収の『源氏物語』和歌は、『物語二百番歌合』などの『源氏物語』和歌と比較されているが、『無名草子』には物語の和歌を、現実の宮廷における女性のために、女性教育メディアとして用い、コメントを加えたり批判したりしていることが明らかとなった。本研究の根幹部分に関わる論文と言える。この論文は平成27年5月に刊行される予定である。また、『源氏物語』そのものの和歌について、現実と虚構という観点から分析を行い、物語の和歌とは、ある面では現実から遊離し、劇場としての時空における歌という側面をもち、現実にはあり得ない営為が一部では描かれていることを考察した。これも平成27年5月に刊行される予定である。また和歌については、藤原定家の娘である民部卿典侍因子について、その家集『民部卿典侍集』の注釈・解説を行い、刊行に向けての準備をすすめた。また関連して内親王や『蜻蛉日記』についても考察した。 このように、女房文学、物語文学、和歌文学という三つのジャンルを縦断しながら、女性教育メディアに関する諸問題の解明をすすめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に述べたように、ほぼ当初の計画通りにすすめており、平成26年度の研究実施計画にあわせた成果が得られた。研究実績として、前年度の研究がすぐに翌年度に刊行されており、問題はない。研究の実施と公開は、極めて順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿った形で進行しており、研究計画に大きな変更はない。当初の計画である女房日記などについて研究をすすめる。ただ、研究をすすめていく過程で、『源氏物語』が膨大な作品でありかつ女性教育メディアの観点で大きな問題を含んでいることが明らかになってきたので、女房日記などとも連関させながら、引き続き『源氏物語』を女性教育メディアの観点で分析していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の図書(物品費)が入手できず、その分に予定していた額、および端数が、残となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の図書(物品)の購入にあてる予定である。
|