研究課題/領域番号 |
25370244
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
徳竹 由明 中京大学, 文学部, 准教授 (30387609)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神功皇后 / 「三韓征伐」 / 海神神社 |
研究概要 |
長崎県対馬市の長崎県立対馬歴史民俗資料館に二度、対馬市教育委員会文化財課に一度、長崎県長崎市の長崎歴史文化博物館に一度赴き、宗家文庫や対馬藩総宮司職・藤氏文書等の対馬の寺社縁起関連資料・地誌等を閲覧・調査・撮影した。また対馬の厳原地区では、寺社縁起に纏わる伝説の聞き取り調査、厳原地区・鶏知地区では、神社の現況調査も実施した。現況調査に関しては、特に厳原地区の志賀神社跡が道路工事の影響で景観が大きく変化したため、念入りに実施した。 主要な調査・研究の結果としては、木坂の海神神社(八幡本宮・上津八幡)について、貞享期の『対州神社誌』の段階では「勸請之儀不相知」と縁起説らしきものが存しなかったことをまずは押さえた。その上で江戸時代中期以降、神功皇后の「三韓征伐」譚に纏わる縁起説が、対馬藩総宮司職の藤氏が主張する海神神社が延喜式の上縣郡和多都美社であるとする説と抵触しないように配慮しながら、また「三韓征伐」譚への関わりを強めながら、元禄期・文化期の二段階にわたって形成されていったことを確認した。そしてその背景として、以前調査・研究した厳原の八幡宮神社(八幡新宮・下津八幡)同様に、近世中期以降の対馬藩に於ける、貿易の不振等に起因した対朝鮮王朝の感情悪化があると纏めて、説話・伝承学会2014年度大会(2014年4月)にて口頭発表を行った。 今後は引き続き神功皇后「三韓征伐」譚に纏わる縁起説を有する神社、さらには元寇に纏わる縁起説を有する神社の調査・研究を行って行きたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
長崎県立対馬歴史文化博物館・宗家文庫の資料、及び長崎歴史文化博物館の資料の調査は、極めて順調に実施できている。 しかし嬉しい誤算ではあるのであるが、対馬市教育委員会文化財課の藤氏文書が、事前に聞いていた分量よりもはるかに多く、しかも大半が未だ未整理の状態であるため、想定よりも時間がかかりそうである。 また対馬での聞き取り調査が、個人の信仰に関わる部分もあるため、勤務先の「人を対象とする研究に関する倫理規程」(2014年3月26日制定)に抵触しないかどうか、慎重に見極めてから行ったため、思うように実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度同様、長崎県立対馬歴史民俗資料館、対馬市教育委員会文化財課、長崎歴史文化博物館へ赴き、対馬の寺社縁起関連資料や地誌の文献調査を実施していきたい。対馬市教育委員会文化財課蔵の藤氏文書も勝手が分かってきたので、今後は順調に進むものと考えている。また聞き取り調査も、「規程」に沿って慎重にすすめていきたい。 なお平成25年度は木坂の海神神社の縁起説について重点的に研究して来たが、一応の目処は立ったので、今後は黒瀬の大吉刀神社(城八幡宮)等の神功皇后「三韓征伐」譚に纏わる縁起説を有する神社、小茂田浜神社(軍大明神)等の元寇に纏わる縁起説を有する神社の調査を、まずは実施していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
日程の都合、及び3月末の対馬への調査で発生した高速船の事故による返金のため、旅費が浮いた。 また物品費で、カメラとパソコンを購入する予定であったが、カメラが想定異常に高くてパソコンを買うのに十分な残高がなくなってしまい、結果的に物品費にも残余が生じた。 基本的には旅費として利用して、一度でも一日でも多く調査を実施していきたい。
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