研究課題/領域番号 |
25370251
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
木田 隆文 奈良大学, 文学部, 准教授 (80440882)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 外地文学 / 旧植民地 / 文化支配 / 汪兆銘政権 / 上海 / 武漢 / 中支 |
研究実績の概要 |
本研究は日本統治下上海およびその周辺地域で展開した日本語文学の実態を究明すべく、その基礎資料の整備及び現地邦人文学者・文学団体の動向調査を試みるものである。本年度は新たな基礎資料の収集と、前年度に入手した文献・資料類の分析に力点を置いた。 具体的には国会図書館・日本近代文学館・愛知大学図書館等の国内所蔵機関の調査に加え、新たな所蔵状況の確認のため、中国東北部(大連図書館・吉林大学図書館)へも調査に赴いた。国内調査では、中日文化協会武漢分会関連資料や、上海で発行された『大陸往来』などの文献を入手し、中国調査においては中支発行の書籍が東北部へも流通していた事実を目録等で確認し、今後の調査の糸口をとらえることができた。また本年度は新たに『上海文学』『新風土』などの上海文学研究会関連の書籍類、『大陸画刊』等の大陸新報社関連の資料の購入も行い、基礎資料の拡充につとめた。 さらに本年度は、これら収集作業と並行し、前年度までに入手した資料の分析を進め、主に武漢地域で展開した邦人文学団体の動向の整理を行った。その結果、これまで等閑視されてきた武漢の日本語文化状況の輪郭が明らかになるとともに、上海との文化的相関性をとらえることができた。その概要は日本上海史研究会等との共催で行ったワークショップ「戦時上海の文学空間を考える―〈中日文化協会〉を起点として」(2015年1月11日 於・大阪学院大学)で報告を行っている。 なお本研究課題は次年度が最終年度を迎える。その研究公開のために、日本上海史研究会や中日文化協会研究会などと連携を行いながら準備も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も重要資料の入手がかない、研究資料の収集は想定以上に順調に進んでいる。また前年度までに入手した資料の分析によって、武漢の文化状況の重要性など研究の新たな可能性の確認や、それに関する成果報告ができたのも収穫であった。 一方で、申請時にキーパーソンとして挙げた池田克己の関連文献リスト作成はやや遅滞している。ただし基本資料はある程度入手を進めているため、次年度はその整理に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画当初は上海を主な検討対象としていたが、調査過程で新たに武漢の重要性が浮上してきた。またこれまではキーパーソンとして池田克己のみに焦点を当ててきたが、新たに武漢の内田佐和吉など、中支各都市に存在した特徴的な文化人を複数確認するに及んだ。 そこで今後は、上海・武漢両都市の文化状況の比較や、中支各都市間の文化人ネットワークを確認してゆく方向を取る予定である。そしてそれによって中支全体の文化空間の究明へと迫りたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は戦時下の外地で出版された図書・資料の収集をもとに行っている。ただしこれらは古書市場に稀にしか現れず、計画通り予算を執行するのが困難な性格を帯びている。また調査地である中国の図書館では、文献複写の料金が必ずしも一定ではなく、状況に応じて変動することも珍しくはない。そのため結果として当初予定より使用金額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度でもあるため、資料購入に充てる比率は下げる。そのため本年度より予算額の見通しが立ちやすく執行も計画通りに進むと思われる。なお次年度は国際シンポジウムや収集資料の展観を計画している。繰越金はそれらの充実に充てる予定である。
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備考 |
その他の成果として以下のものがある。 日本上海史研究会主催・「中日文化協会」研究会協賛 ワークショップ「占領地・植民地における<グレーゾーン>を考える―国際比較の視点から―」(2014年8月9日 於・大妻女子大学市ヶ谷校舎)※司会担当
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