研究課題/領域番号 |
25370253
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研究機関 | 長崎総合科学大学 |
研究代表者 |
横手 一彦 長崎総合科学大学, 共通教育部門, 教授 (60240199)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 戦後文学成立期 / 被占領下の文学 / 敗戦期文学 / GHQ/SCAP検閲 / 『雅子斃れず』 / 『長崎・そのときの被爆少女』 / 長崎(浦上)原爆 / 長崎原爆 |
研究実績の概要 |
当該研究2年目の2014年度(平成26)は、初年度と同様に、科学研究費助成事業交付申請書の「研究の目的」及び「平成26年度の研究実施計画」に記載した目論見に従い、概ね、この研究計画に添う形で研究を進展させた。以下、これに従い、具体的に列記する。 1.「著者等の研究打ち合わせや合意形成」ーー当該研究に直接に関係する東京都在住の方(個人名を伏す)や沖縄県在住の方(同)と直接にお会いし、研究進捗や資料整理の状況を報告し、今後のことを話し合った。また当初の研究計画にはなかった新規企画に関して事前に相談し、その協力を得て、準備し、実施した。この新規企画のために、一時的に、個人所蔵の別の関連資料の提供を受けた。更に当該テーマに添う別途の個人とお会いし、新規研究の可能性を話し合った。 2.「個人所蔵『長崎・そのときの被爆少女』関連・周辺資料の記録化」ーー借用している関連資料の電子化を終えて、永続的な資料保存を前提とし、書誌的な整理を行った。この作業は、現在も進行中である。 3.「関連・周辺資料収集」等ーー2013年10月に石田壽(石田雅子父、被爆時長崎地方裁判所長)が、1953年に京都地方裁判所内で行った講演の紙磁気録音テープが発見された。これは、最も早い初期被爆証言であり、貴重な音源である。この音声資料を再生可能な録音状態に復元し、この電子化を行った。今後、この文字化を行う予定である。2014年夏に長崎県立図書館主催「原爆文学展」に当該資料の一部を提示した。また同館において、被爆後の長崎復興に努めた視点から、「石田壽展」を企画し、実施準備等を行った。同館等において、同主旨の講演を行った。加えて、被爆直後に運行された「臨時救援列車」(特筆するべき人類史的出来事との仮説)について、証言記録や画像資料などを纏め、了解を得て、これを私家版の小冊子形態で刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究に着した初年度に、前年度作成の研究計画の立案内容を改めて確認した。その後に、関係者の了解を得て、研究実施計画を確定し、当該の実証的研究を開始した。研究計画の2年目に、その一部を公開し(冊子形態記録集の無料頒布)、講演、県立長崎図書館企画展参画やこの準備等を通じ、成果の一端を公にした。 別途に、この2年間、私的に借用している未公開資料の整理と保存に努めた。2年目の手前に、この電子化作業を終えた。その上で、当該の書誌的な整理作業を進めている。これを終えた時点で、当該資料を所蔵者に早めに返却したいと考える。加えて、研究計画の策定時点で想定していなかった史的項目の発掘等を踏まえ、これらの拡大深化に努め、先人の努力に学び、立ち返った(米国大学図書館日本部長某の病死・プランゲ文庫等に関する業績等)。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目は、「現在までの到達度」に記述した研究内容の延長線上にあって、これと同様の努力を重ねたいと考える。これまでの2年間の経緯や成果を踏まえ、さらなる研究領域の拡大と深化を求め、作業を継続する。 例えば、この目論見の一つに、GHQ/SCAP検閲に関連し、長崎(浦上)原爆を最も早く作品化した文学作品がある(従来は『雅子斃れず』・長崎原爆文学の嚆矢ともいえる作品・史的に未確定)。この作品と文学的経緯を、史的には必ずしも明確でない点などを含めて、実地踏査を重ねて探究し、資料的に確定する努力を重ね、新たな視点から読み解き、史的に位置付けることを試みたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度に、資料集的性格のつよい私家版を発行した。2015年度も、当該研究課題に添うものとして、前年度とは異なる資料や記録等を纏め、私家版として発行する予定である。これは、学会誌や勤務校研究誌への寄稿等とすれば、その頁負担が重く、また金銭的な負担も同様と考えたことによる。 このため、金銭的な余裕を持たせるため、意図的に、次年度使用額を生じさせた。
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次年度使用額の使用計画 |
私家版発行に伴う編集経費や印刷費等の経費に充当する予定
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