研究課題/領域番号 |
25370256
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松浦 由起 豊田工業高等専門学校, 一般学科, 教授 (10209497)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 武功夜話 / 二十一巻本 / 書誌調査 / 吉田茂平治 / 内藤東甫 |
研究実績の概要 |
戦国軍記『武功夜話』は、数種類の伝本が存在している。新人物往来社から刊行されている『武功夜話』は、二十一巻本を現代語訳したと前書きにはあるが、実際には六巻本と二十一巻本との、2種類の伝本を典拠としている。伝本は、三巻本、五巻六冊本、八巻本等、数種類あるが、本研究では最も長い二十一巻本について、正確な翻刻本文を作成することを計画している。先に、二十一巻本の巻一~巻六については、白黒複写に基づいて翻刻を作成し、ブックショップマイタウンから共著で刊行した。白黒複写も現所蔵者からお借りしたものであったが、平成26年度は、不鮮明な白黒複写を避けて、七巻以降二十一巻までを翻刻するため、東京在住の現所蔵者の了解を得て、原本2000枚近くを写真に撮らせていただき、その書誌について調査した。 この調査で、巻二十の後遊紙の裏に「茂平次扣」とあることが判明した。「もへいじ」は、前野氏系図によれば、二人いるが、年代から考えると、該当者は『前野氏系図』で「吉田茂平治」と書く十九代当主「吉田雄武(かつたけ)」であることが分かった。吉田雄武は寛延二年(一七四九)に亡くなっている。(三巻本『武功夜話』の奥書にも「享保四年」(一七一九)「吉田茂平次」の名が記されている。) この成果については、豊田高専研究紀要豊田工業高等専門学校研究紀要 第47号に、「二十一巻本『武功夜話』書誌調査報告」(2015-01-30)として発表した。 また、調査過程で拝見した前野氏系図に、尾張藩士内藤東甫が前野家に立ち寄っていることが記されていた。通説の東甫の年齢では、立ち寄った年号では幼少期に当たるため、いろいろな史料を調査した結果、通説の享年が誤りであると考えられることが判明した。この調査結果は、同じ研究紀要に「『前野村前野氏系図 巻二』と内藤東甫について ― 東甫享年への疑義 ―」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、『武功夜話』がどのように成立し、改訂されてきたかを明らかにすることを目的とするものである。どの『武功夜話』が祖本であるか、そもそも吉田雄〓(かつかね)が書いたとされる『武功夜話』が現存しているかどうかなど、不明なことも多いが、二十一巻本『武功夜話』については、通称「吉田茂平治」という、前野村庄屋十九代当主「吉田雄武(かつたけ)」(寛延二年(一七四九)に亡くなっている)であるらしいことが判明した。 平成26年度の成果として、前述の通り、豊田高専研究紀要豊田工業高等専門学校研究紀要 第47号に、「二十一巻本『武功夜話』書誌調査報告」、「『前野村前野氏系図 巻二』と内藤東甫について ― 東甫享年への疑義 ―」(2015-01-30)として、2本の論文を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
内藤東甫の享年について、調査過程で判明したことに加え、さらに確定的なことが言えそうなので、調査を継続したい。 二十一巻本『武功夜話』については、過去に入手していた白黒複写では、不鮮明であったものが、鮮明なカラー画像のデジタルデータとして入手できた。この画像をもとに、翻刻作業を急ぎたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は研究補助者を利用することがなく、人件費、謝金が支出されなかったため。 また、研究成果の印刷が、研究紀要のみであったため、多くは学内予算で支出されることになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究補助者の作業手順の検討をし、その準備を整えるとともに、研究成果の最終報告の印刷についても検討する予定である。
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