研究課題/領域番号 |
25370258
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研究機関 | 広島商船高等専門学校 |
研究代表者 |
朝倉 和 広島商船高等専門学校, 一般教科, 准教授 (00390493)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 絶海中津 / 五山文学 |
研究実績の概要 |
まずは、絶海中津(1336-1405)及び門下生に関連する作品集の諸本を、地道に調査・収集した。主な訪問先は、西尾市岩瀬文庫・国立公文書館 内閣文庫(2度)・建仁寺両足院・京都府立総合資料館・福井県立図書館である。 また、4月に行われた和漢比較文学会の関西例会(大手前大学)では、「東福寺霊雲院蔵『花上集』巻末の附載雑録から見た禅林の文芸―喝食・少年僧を対象とする文芸の隆盛―」という題目で、学会発表した。 『花上集』は、本朝禅僧の七言絶句詩のみで構成された、五山文学における代表的な詞華集(アンソロジー)である。京都五山の有名な20名の詩僧の七言絶句詩が各10首ずつ、合計200首収められている。『花上集』の諸本中、特に霊雲院本の巻末には、横川景三作と解される詩60首の他、『五山文学新集』第6巻に抄録される『明叔録』に見られる、陸奥出身の某喝食が詠じた「残臈欝懐依孰開、乍迎高客拂塵埃、再遊使処約時節、雪后江村月在梅」の28字を、詩尾と詩首にそれぞれ置いた計56首の万里集九詩や、「戀部」という部立のもと、横川や義堂周信や万里の艶詩とともに、報告者未見の絶海の詩群が列挙されており、彼の新たな一面が垣間見られるかと非常に注目された。 霊雲院本の巻末に、作詩の教科書・参考書レベルとして相応しい横川の詩群や、残念ながら新出資料ではなかったが、絶海に仮託された詩群を含む、多くの艶詩とそれに類する作品が書き記されているということは、結果的に、喝食や少年僧(文挙契選)の文筆修業のためという、『花上集』の編纂目的や利用目的をより一層際立たせる効果を生み出しているのではないか。「艶詩(詞)」の製作には、五山の文壇である「友社」への入社を果たすための重要な文筆修業の一側面があった。なお、ある詩群の作者を絶海に仮託することの、禅林文芸における意味合いに関しては、もう少し事例を集めてから述べたいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
鄂隠慧奯『南遊稿』、西胤俊承『真愚稿』、琴叔景趣『梅陽琴叔百絶』『松蔭吟稿』、旭岑瑞杲『日下一木集』には、先行研究が殆どないので、訓読・語釈・通釈が難解で時間がかかり、苦戦している。なお、『南遊稿』や『真愚稿』の詩題の打ち込みや整理は、一通り終了している。
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今後の研究の推進方策 |
五山文学の代表的なアンソロジーである『花上集』には、絶海中津に加えて、彼の門下生(霊松門派)である鄂隠慧奯や西胤俊承の七言絶句詩が各10首ずつ収められている。『花上集』には抄物(『花上集鈔』)も存するので、まずは三者の10首を起点として、絶海を派祖とする霊松門派に特徴的な素材・表現・典拠等に当たりをつけ、その核心に大胆に迫っていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
建仁寺両足院など寺院に伝本調査に赴くことが多いが、先方に急な法事等が入り、スケジュール調整がうまく行かず、実現できなかった調査があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
寺院等に伝本調査に赴く場合は、調査期間を第3候補ぐらいまで想定するぐらいの余裕を持ってスケジュール調整して、臨みたいと考える。また、確実に調査に赴くことができる図書館・文庫等から優先して訪問したいと考える。
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