研究課題/領域番号 |
25370259
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
恋田 知子 国文学研究資料館, 研究部, 助教 (50516995)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 物語草子 / 仮名法語 / 絵巻 / 尼僧 / 比丘尼御所 / 陽明文庫 / 浄厳院 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、寺家と貴顕との交流を具体化しうる書物群について調査・研究を進めている。安土浄厳院蔵の仮名法語類やそれらとの関連もうかがわせる陽明文庫蔵「道書類」の研究を継続している。今年度は、解脱上人貞慶が臨終の心得を説いたとされる『臨終用意事』の新出本について翻刻紹介した(『三田國文』59号)。本作にみる具体性は、良忠の『看病用心抄』(浄厳院蔵)などにも引き継がれており、宗派を超えて後世の臨終行儀書類に少なからぬ影響を与えたものの、現存伝本が極めて少なく、「道書類」内に慶長・元和頃の写本が伝来していたことは重要と考える。 また、禅宗の尼による問答を含む物語草子で、室町期の寺家と貴顕との交流を推察させる『幻中草打画』について、最古写本を所蔵する鶴満寺より原本調査の機会をいただいた。原本未見でまとめた旧稿の誤りを訂正しつつ再考を試み、関連文献の調査・考察をふまえた口頭発表や論文執筆をおこなった(伝承文学研究会平成26年度大会、人類文化遺産テクスト学研究センター国際研究集会)。あわせて、薦僧による女人教化の物語草子である大阪市立美術館蔵『はいかひ』絵巻を例に、公案の物語草子化について考察をまとめた(『中世の随筆』)。両作品を具体例に「尼と物語草子」の観点から考察をまとめた(『国語と国文学』92-5)。 なお、これまでの自身の研究内容を踏まえ、女性と物語草子とのかかわりについて、国士舘大学や熊野三山歴史講座において講演をおこない、研究成果を広く社会に還元できるよう努めた(「物語草子研究の現在」、「女性の熊野詣」)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
書物を通しての貴族圏と寺院圏の交流という観点から、寺院や関連文献所蔵機関での調査・研究を進めている。概ね順調に進んでいるが、原本実見の機会により、再考察の必要も生じたため、研究課題に合致したものではあるが、計画当初には予期していなかった作品の調査、再検討に着手した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度同様、個別の重要文献の考察を進めるとともに、研究成果の全体像の把握や考察に努め、積極的に研究成果の報告に取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
三月に予定していた調査先(二箇所)との日程調整がつかず、次年度に変更したため。また1月刊行予定で購入を希望していた参考書籍(『四親王家実録 貞成親王実録』ゆまに書房)の発刊が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
調査先と日程調整をおこない、すでに一箇所は調査を済ませており、もう一箇所も年内に行う方向で調整している。購入予定の書籍についても出版社の刊行状況を確認しつつ、刊行次第、購入手続きを進める予定である。
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