研究実績の概要 |
本研究は、西欧占星術概念の歴史的な変遷について、デジタル・データベースを駆使して、実証的に検証しようとする研究である。研究対象とする時代は、中世、初期近代、近代と広範囲に渡り、対象文献も膨大であるが、平成26年度は、昨年度に引き続き、Literature Online等のデータベースからデータのダウンロードを行い、今後の研究のための一次資料の基盤整備を行った。 さらに、一次資料データの基礎的な分析を行い、英国初期近代を代表する作家たちの作品において、占星術概念がどのような変遷の過程を示しているかについて、新しい知見を得た。具体的には、ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare, 1564-1616)、フランシス・ベイコン(Francis Bacon, 1561-1626)サー・トーマス・ブラウン(Sir Thomas Brown, 1605-1682)の作品に現れる占星術概念(例えば、"planet", "disposition", "astrology", "astronomy"等)がどの程度新しい宇宙観を反映しているかについて分析を行い、シェイクスピアの語彙においては、これらの占星術概念が古い宇宙観に基づいているのに対して、ベイコンの著作においては、これらの概念が新しい宇宙観の枠組みにおいて成立していることを明らかにした。トーマス・ブラウンの場合は、どちらかというとシェイクスピアに近いが、新しい宇宙観に基づく近代的な概念としても解釈できるような使用例が若干見られる。結論として、これらの初期近代を代表する作家たちの作品においては、西欧占星術概念の歴史的な変遷の端緒が確認されることが明らかになった。
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