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2013 年度 実施状況報告書

『レディーズ・ホーム・ジャーナル』の小説作品における政治力

研究課題

研究課題/領域番号 25370262
研究種目

基盤研究(C)

研究機関岩手大学

研究代表者

秋田 淳子  岩手大学, 人文社会科学部, 講師 (10251688)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードアメリカ小説 / 女性大衆雑誌 / アメリカ女性文化 / アメリカ文化
研究概要

1914年に第一次世界大戦が勃発する。第28代大統領Woodrow Wilsonのもと、1917年4月にアメリカは参戦した。戦前に確立されていたLadies' Home Journal(*以下、LHJと記載する)の女性読者へ及ぼす潜在的な力とEdward Bok編集長の愛国心は、参戦後の同誌を一種の政府機関誌へと変えていくこととなった。同誌と女性読者の緊密な関係性は、戦時下において、誌面の呼びかけに彼女たちを敏感に反応させ、内地における戦闘員として、国家の大義に応えようと奮闘させることとなった。1917年1月以降、戦争への協力を求めるWilsonとの面談を重ねたBokが発するメッセージは、女性読者の国民意識を高揚させ、愛国心を鼓舞し、当時の政局の趨勢に加担させる大きな影響力をもった。
申請者は、戦時中に発表されたLHJの掲載小説作品の役割を分析し、プロパガンダ小説として政治的なメッセージを発信しているものと、その主題を扱っていないものに大きく分けて分析をした。その際、戦時という「現在」、過去から継続されてきた「日常」、そして戦後という「未来」という時間軸に焦点をあてて考察した。戦争を直接扱わない後者の小説群が、平時の「日常」を扱うことで、戦時中に断片化されることとなった女性の経験や時間を結び、戦後に来る未来へとつないでいく役割を果たしていたことを示した。
戦時中のLHJが呼びかけた活動の多くは、読者個人の家庭運営における努力によるものだった。それらは、女性間の絆を断ち、彼女たちの関心を、家庭という領域に集中させる傾向が生じる。一方、小説作品は、断片化されていく女性の経験を収斂させる媒体となった。LHJの小説作品は、読書体験を共有することをとおして、戦争を直接扱う他の言説よりも、多くの読者を団結させていった可能性を示唆し、小説がもつ政治力の一端を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

口頭発表を1回、それに基づく論文を1本しか書けなかった。1900年ころの家事指南書や料理に関する資料は集まったので、次年度は研究時間を多く作ることで、複数の論文を執筆したい

今後の研究の推進方策

LHJの戦中の言説には、さまざまな倹約法の提案があり、環境問題が各家庭と密接な関係をもつことが分かった。第一に、環境問題と解決策を家事アドヴァイスから読み取りたい。第二に、資料収集を続けてきた、雑誌刊行当時の家事アドヴァイスやレシピの言説と、LHJの食に関する言説を比較分析し、食の持つ政治的な力を考察したい。さらに、小説作品に、その姿勢がどのように反映されているかを分析したい。

次年度の研究費の使用計画

学会発表に応募する準備が足りなかったためなどで、研究が遅れたことにより支出が予定よりも少なくなった。
平成26年度は、学会発表・資料収集のための旅費、学会参加費および文献収集に関わる費用に充てる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 その他

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 第一次世界大戦期におけるLHJについての一考察

    • 著者名/発表者名
      秋田淳子
    • 学会等名
      中里まき子主催「世界大戦期の文学創作と女性たち」シンポジウム
    • 発表場所
      岩手大学
  • [図書] トラウマと喪を語る文学2014

    • 著者名/発表者名
      中里まき子編、エリック・ブノワ、ヴァレリー・ユゴット、木村直弘、佐藤竜一、松元季久代、黒岩卓、千川哲生、谷口円香、坂本さやか、林修、福島勲、秋田淳子
    • 総ページ数
      249 (237-245)
    • 出版者
      朝日出版社

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公開日: 2015-05-28  

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