本研究は、トウェイン没後100年にしてようやく出版された無削除新版『自伝』(2010)をとりあげ、その<語り>の特徴である「現在」と「過去」を往来する口述の「現在」に焦点を当てることによって、1906年における著者の活発な社会批評を分析した。トウェインは、この地球上(フィリピン、コンゴ、ロシア他)における残虐行為を厳しく批判する。 その立ち位置や歴史意識は悲観的なものだとは言い難く、むしろ能動的で力強い革新的な意識として浮上する。そうした内実を明らかにすることによって、トウェイン研究史上これまで相対的に看過されてきた晩年期の再構築に貢献することを目指した。
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