本研究は18世紀イギリスの哲学者デイヴィッド・ヒュームを出発点として、18世紀イギリスの文学と思想の言説のマッピングをこころみた。まずヒュームの思想においては感情や情念を重視する感傷主義的な側面が存在していることを明らかにした。さらに、彼の感情重視の姿勢は、18世紀イギリスにおける市民社会や市場経済を説明し正当化するためのイデオロギーとして機能していることを明らかにした。また、ヒュームの思想を重要な補助線として18世紀イギリスにおける家庭小説ジャンルの形成過程を考察し、さらにヒューム思想を受け継いだエドマンド・バークによる政治的保守思想の構造を美学的なイデオロギーという観点から説明した。
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