研究課題/領域番号 |
25370265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
小泉 由美子 茨城大学, 人文学部, 教授 (60178556)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エミリ・ディキンスン / 宗教詩 / 聖書の書き替え / 完全脚韻 / 南北戦争 |
研究概要 |
A EDIS国際会議での研究発表(2013/08/10)アメリカ合衆国メリーランド大学 "Emily Dickinson and 'that keyless Rhyme'"というテーマでディキンスンの宗教詩と完全脚韻の相関関係を検証し、詩人が最終連完全脚韻を使用した背景には、当時の会衆派の宗教文化と南北戦争が表象されていることを証明した。部分韻の名手として有名なディキンスンが1860年代初頭完全韻を使用して黙示録のイメージで最終連を閉じた詩人の意図を読解したところに論文の意義はある。イレギュラーパターンに完全脚韻の象徴的意味を解読することにより、その背景にはアメリカ南北戦争の歴史的背景があるという指摘も重要である。 B 研究論文1本 "Better than music!"の詩分析と脚韻分析を通し、ディキンスンがモーゼやイエス・キリストの預言派詩人の伝統の線上に自らを位置づけていることを証明した。最終連完全韻の象徴的意味と黙示録のイメージを重ね合わせ、「天上の音楽」を奏でようとする詩人の意図を解読した点に意義がある。聖書テクストの書き替えという視座で宗教詩を実証的に解読することにより、叙事詩的テーマを歌うことができた詩人としてのディキンスン再評価につながる可能性がある。 部分韻の名手として文学史上評価されているディキンスンと、1862年に書かれた宗教詩における完全韻の相関関係を解明することにより、当時の歴史的文脈が見えてくる。抒情詩人ディキンスンが「歴史」を書き込むことに成功しているという事実から、新たなディキンスン像を提示できたことが重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)Harvard大学Houghton Libraryディキンスン家蔵書の宗教関連文献リストを作成した。具体的に当時の説教集を読解し、論文執筆の基礎作業が完了した。 2)詩形と意味の対応という視点で、1862年に書かれたディキンスンの宗教詩を解読した論文を1本研究発表、1本出版した。ディキンスンが自らをモーゼやイエス・キリスト等の預言者詩人の伝統に属するものと表現していると分析することができた。ただし、具体的に当時の会衆派の教義との関連を解明が課題として残った。 3)2013年8月Houghton Libraryでの草稿読解を経て、ディキンスンの宗教詩に関する英語論文を執筆した。 4)歴史的事実と完全脚韻使用の関連がまだ解明できてない。また、会衆派に関係する文献と南北戦争に関する文献を渉猟することができていない。しかし、研究目的に照らして、大きな問題とはならないと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
1)ディキンスンの生地アマーストに行き、当時の会衆派の教義が書かれている文献をthe Jones Libraryとthe Congregational Libraryにて探す。 2)ピューリタン文学の研究者、大西直樹教授(国際基督教大学)を講師に招き、「宗教と文学」の集中講義を開講する。個人的に論文に関し助言をいただく。 3)ハーバード大学Houghton Libraryにて、ディキンスン家所蔵の宗教関連書籍を書き写す。 4)ディキンスン学会有志による「ディキンスンを読む会」で研究発表をする。(早稲田大学) 5)19世紀アメリカ会衆派と南北戦争関連書籍を読み、詩分析の論文を書く。
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次年度の研究費の使用計画 |
6,308円が平成26年度使用となった。理由は、洋書価格変動のためである。 6,308円は、文献購入にあてて、即執行する予定である。
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