1.共著書1冊。エミリ・ディキンスンの「斜陽」(F320)を構文の特殊性に注目し、信仰を吐露した「宗教詩」と解読した。ディキンスンは生涯信仰告白をしなかったが、実は敬虔なキリスト教徒の一面を持ち合わせていた事実を指摘した。 2.研究発表2本。1)EDIS(エミリ・ディキンスン国際会議)。パリ国際大学。ディキンスンの「斜陽」(F320)における隠喩の特殊性について、ロバート・フロストのメタファー論を援用し論じる。ディキンスンは個人的体験に基づいた具象的イメージを駆使し宗教詩を書いた。彼女の言うところの「アメリカ的メタファー」とは何か解明した。2)日本エミリ・ディキンスン学会年次大会。駒澤大学。「ディキンスンの風景表象」というシンポジアムを企画・発表予定。ピクチャレスク・アメリカの歴史的文脈でディキンスン(F849)を読む。トーマス・コールの一枚の絵「ホリヨーク山からの眺望」を下敷きにした作品であり、コールが山頂から愛でた風景を、ディキンスンは地上から閉ざされた窓を通し逆アングルで抽象的に描出している。風景の写実的迫真性と詩人が位置する窓のある現実空間が互いに作用し合い、聖なるものとの遭遇の瞬間を現実化させる詩人の鋭い自然観照と巧みな技法を分析する。 3.訳詩・訳注。思潮社刊『現代詩手帖』8月号ディキンスン特集号。2編の宗教詩の訳と訳注を担当。ディキンスンという詩人が当時の伝統的宗教詩の枠組みを駆使し、実験的かつ自由に自分の物語を語った事実を証明した。 4. その他。ディキンスン学会首都圏地区研究会第8回、第9回、第10回(早稲田大学)において、F627、F905、 F849の詩分析の研究発表を行った。
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