研究実績の概要 |
本研究の3年目として、これまでの成果を海外の査読付き出版物を通して発表し、リサーチを国内とアメリカで進めたほか、研究対象の文学・音楽作品や関連資料の分析を深めた。
Palgrave MacmillanのAmerican Literature Readings in the Twenty-First Century Seriesの一冊として出版が決まっている研究書Carson McCullers in the Twenty-First Centuryのchapterとして採用されることが予定されていた “The Image of the String Quartet Lurking in The Heart Is a Lonely Hunter” の執筆を完成させ、査読にも合格した。このchapterを通して、McCullers初期の複数の作品に、弦楽四重奏のイメージがほとんど無意識に埋め込まれ、効果的に機能しているという新たな視点を示した。今後、さらに細かな手直しを編集者たちと進めていくので、原稿の見直しを続けている。 Aldous HuxleyのPoint Counter Point, T. S. EliotのFour Quartets, Thomas MannのDoctor Faustusなど、モダニズム期に弦楽四重奏という音楽、特にBeethovenの弦楽四重奏曲Op.132という特定の曲に触発される形で生まれた文学作品の分析を深め、論文の執筆を進めた。また、Vladimir NabokovがNabokov’s Quartetとして集めた4つの短編の間に存在する音楽的関係性について、作者自身の独特な音楽感覚と関連させながら分析を展開し、論文の執筆を進めた。
翻訳では、クレア・V・ワトキンスの『バトルボーン』を完成させ、出版した。
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今後の研究の推進方策 |
Macmillanから出版されるchapter “The Image of the String Quartet Lurking in The Heart Is a Lonely Hunter” を、編集者と話し合いながら最終的な手直しをする。
執筆中のAldous HuxleyのPoint Counter Point, T. S. EliotのFour Quartets, Thomas MannのDoctor FaustusとBeethovenのString Quartet Op.132との関係についての論文と、Nabokov’s Quartetについての論文の2本を、平成28年度中に書き終えて、海外の学術誌の査読に挑戦する。
1960年前後に文学的quartetと呼べる作品を書いたLawrence Durrell, Doris Lessingの分析も進める。
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