研究課題/領域番号 |
25370267
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
高際 澄雄 宇都宮大学, 国際学部, 名誉教授 (50092705)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘンデル / 18世紀前半イギリス演劇 / フィールディング / 笑劇 / バーレスク / 貴族歌劇団 |
研究実績の概要 |
ヘンデルの作曲・公演活動と、18世紀前半イギリス演劇界との関連を調査した。従来、第2ロイヤルアカデミーと貴族歌劇団との関係は、イギリスにおけるイタリア歌劇界の問題としてのみとらえられてきたが、イタリア歌劇は上演芸術として演劇との関係も深かったので、演劇界との関連でも捉えなければならない。本年は、その詳細を明らかにするために、9月と3月に調査を行い、以下の点を知ることができた。 1.1727年には、ジョン・ゲイのバラッドオペラ『乞食オペラ』と、ジョン・ヴァンブラ原作コリー・シバー脚色の『憤激の夫』(The Provok’d Husband)が大成功を収め、演劇界に新しい発展の可能性が示された。ところが、当時の演劇界はその可能性を実現させるために努力しなかった。『乞食オペラ』のリンカンズインフィールズ劇場、『憤激の夫』のキングズシアターは、2作によって示された新しい要素を利用することができなかった。 2.この可能性を巧みに利用したのは、ヘンリー・フィールディングだった。彼は、無認可のヘイマーケット小劇場で、第3作『作者の笑劇』(The Author’s Farce)と第4作『親指トム』(Tom Thumb)を、これまでの作劇法に頼らない笑劇およびバーレスクによる斬新な物語展開を行うことで、大成功を収め、新しい観客層を開拓することとなった。貴族歌劇団は、この演劇界の変化に刺激を受け、ヘンデルの作曲公演に不満を持った上流階級の人々が結成し、ヘンデルに第2期王立アカデミーの傑作群を作曲公演する刺激を与えた。 3.イギリスのイタリア歌劇界は、貴族歌劇団崩壊後、急速に力を失い、ヘンデルもついには、イタリア歌劇の作曲公演から離れるが、フィールディングから受けた影響は、オラトリオの作曲公演に移ってからも続いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度前半では、フィールディングの演劇界に引き起こした変化がヘンデルに与えた影響を具体的に明らかにできたが、ヘンデルの作曲作品の分析をする前に、フィールディングとヘンデルとの人的な関係を示す文書が見つかったために、27年度の研究目的を一部達成し、ヘンデル作品の分析が遅れた。この調査は27年度最初期に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は最終年度であるので、ヘンデルのオラトリオ『セメレー』と『ヨセフとその兄弟たち』におけるフィールディングの笑劇とバーレスクの影響を明らかにして、これまで見落とされていたヘンデルの作曲公演におけるイギリス演劇の影響を具体的に明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者が計算違いをしてしまい、余剰が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度に文房具を購入する。
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