本研究の目的は、演劇研究の方法が交錯する同時代的文脈において、テクスト(戯曲=ドラマ)とパフォーマンスの関係をめぐる新たな理論的知見を参照しつつ、現代アメリカ演劇の諸実践を記述・分析、あるいは歴史化する道筋を見いだし、また実際にそうした記述・分析、あるいは歴史化の作業を行うことにある。平成29年度においては、前年度から引き続き、演劇研究の歴史という側面と今世紀に入ってからのテクストとパフォーマンスの関係の再理論化という事態について、該当する主題にかかわる基本図書、すなわち広義の演劇史にとどまらない現代アメリカ演劇関係や演劇理論関係の研究書や演劇を扱ったさまざまな雑資料(新聞、大衆雑誌を含めた諸雑誌)の収集を行った。と同時に、本研究の主題が歴史把握や思考のフレームといった同時代的問題に触れるため、ポスト構造主義以降の批評理論や思想一般にかかわる欧米並びに日本の資料の収集を継続した。 また、当該研究の最終年度にあたる今年度は、8月初旬から9月中旬にかけて、ベルリン自由大学国際演劇研究センターに客員研究員として滞在し、同センター関係者に当該研究の成果について報告を行い、意見を聴取することで、ヨーロッパ、なかでもドイツにおける演劇研究の理論的展開のなかで、当該研究が持ちうる意味について把握することができた。その後、アメリカ合衆国コロンビア大学において、当該研究と関連するテーマで、招聘講演を行う機会を得ることもできた。 来年度以降、当該研究の直接的成果をできるだけ早急に発表していく予定である。
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