研究課題/領域番号 |
25370271
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高田 康成 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10116056)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超越 / 翻案 / 新約 / 近代 / 世俗 / 臨界 / 終末 / 終わりの時 |
研究実績の概要 |
John Dryden によるシェイクスピアの翻案2作(All for Love、Troilus and Cressida)を対象として、それぞれ原作(Antony and Cleopatra、Troilus and Cressida)との差異を、「超越」の主題を中心にして検討した。両作ともに、原作のシェイクスピアには通奏低音のように基底的レファレンスとして潜在しながら作品世界の臨界を示唆するのにあずかって力のあった、聖書(特に新約聖書)への言及が意義深くも不在であることが判明した。同時並行して進めた「近代論・世俗論」では、古典的なカール・レーヴィット(『歴史の意味』)と近年のチャールズ・テイラー(『世俗世界』)さらにはジョルジョ・アガンベン(『終わりの時』)の読解を進めることにより、知見を深めた。「世俗論」での根本問題がいわゆる「終末論」的ヴィジョンと、ユダヤ的伝統に立つ「黙示録」的な「終わりの時」との質的な差異にあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の翻案論において取り上げる予定であった、聖書的超越世界の翻案における変容について、一応の成果を見たこと。また世俗論では、ユダヤ的伝統の重要性が新たに認識できたことは有益であった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、今までの成果に基づいてシェイクスピアの受容論にまつわる「近代」的諸問題を明確化させる予定である。「近代」につていは、西欧にかぎらず、我が国の近代にも間接的に接続していく予定である。
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