研究課題/領域番号 |
25370273
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
大田 信良 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (90233139)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 英文学 / 映像文化 / ポリティカル・エコノミー / メディア文化 / ポピュラー・カルチャー / グローバリゼーション / 金融資本 / 知識人 |
研究概要 |
1.「ヘリテージ映画」以降の英国映像文化における「英文学」としてのKazuo Ishiguroについての論考は、日本ヴァージニア・ウルフ協会3月例会で、大谷伴子と共同発表「グローバル・ポピュラー・カルチャーあるいはメディア文化のなかの『英文学』――文化冷戦のなかのウルフとラティガン」をおこなった。 と同時に、Ishiguro論自体の原稿も執筆し、ほぼ完成している。ただし、論文執筆者の重要メンバーの病気等の理由で、出版企画が遅延しているため、現在のところ出版にはいたっていない。 2.「英文学」の制度化と冷戦期のアメリカ文学・アメリカ研究との関係性については、論集『冷戦とアメリカ――覇権国家の文化装置』において「誰もエドワード・サイードを読まない?――批評理論と冷戦期のアメリカ文学」として出版した。さらに、Malcolm Bradburyの英米文学研究が前提としたF. R. Leavisの「ケンブリッジ英文学」の創設・制度化とその歴史的コンテクストについての論文「功利主義の伝統と『英文学』のなかのロレンス――幸福はどのように表象されるか」を執筆した。これはロレンス協会の論文集として今年度掲載・出版が決定している。 3. T. S. Eliot編集The Criterion についての、大英図書館及びオクスフォード大学マートン・カレッジ、また、F. R. Leavis「マイノリティ・パンフレット」についてのケンブリッジ大学における文献調査については、25年度は、研究室棟の耐震工事と引っ越し作業の日程の関係で、予定していた文献調査が実施できなかった。 ただし、「エリオットの文化論、制度としての『英文学』、クリエイティヴ産業――1990 年代英国カルチュラル・スタディーズ/文化政策学のあとで」をエリオット学会誌に発表・出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 イシグロ論は、ほかの論集執筆者の事情で出版には至っていないが、原稿はほぼ完成しており、平成26年度秋には、ほかの論文と共に入稿・編集作業に入り、出版される予定であるので、おおむね順調な進展といえる。 2 「英文学」の制度化については、アメリカ文学・アメリカ研究との関係性においてサイードの批評理論を論じた論文を冷戦論集で発表した。さらに、その前史となる英国国内のコンテクストについても、LeavisとLawrenceについての論考をまとめ、今年度出版予定である。したがって、この分野については、当初の計画以上に進展している。 3 オクスフォード・ケンブリッジの文献調査のための下調べは終わっているが、スケジュールの都合で、実際の調査のため渡英できなかったので、この分野はやや遅れている。 以上3分野の達成度と進展状況を総合的に考えるなら、おおむね順調に進展している、といえる。
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今後の研究の推進方策 |
1論文執筆中の「ヘリテージ映画」以降の英国映像文化における「英文学」としてのKazuo Ishiguroについての論考「『名残り』の美学と地政学――ラシュディ、イシグロ、コソボ紛争」は、平成25年度3月に企画再開の準備がはじまり、平成26年度8月末入稿、補足・概説的な情報を盛り込んだコラムとともに論集として年度内に彩流社より刊行することが決定している。したがってこのスケジュールで、本論文も完成原稿を仕上げ出版のかたちで発表する。 2冷戦期におけるアメリカ文学やエリア・スタディーズとしてのアメリカ研究との関係性において、同時代の英文学・モダニズムの制度化ならびに1980年代以降のヘリテージ映画などの映像文化やグローバル・ポピュラー・カルチャーへの転回を歴史化する作業については、Malcolm Bradburyの仕事を中心にすでに収集した資料・文献をもとに論文を執筆する。また、この作業は、アメリカ文学者を含む複数メンバーと共同で進める予定もあり、具体的には、平成26年度10月26日日本英文学会関東支部会のシンポジウムで、講師として発表する。 また、出版した『冷戦とアメリカ――覇権国家の文化装置』村上東編 京都: 臨川書店, 2014.の合評会や新たな研究会、等を企画し、さらなる議論と論文作成の準備を進めていく。 3 T. S. Eliot編集The Criterion とRothermere卿夫人に関する大英図書館及びT. S. Eliotコレクションを所蔵するオクスフォード大学マートン・カレッジ、および、F. R. LeavisのMass Civilisation and Minority Culture(1930)や「マイノリティ・パンフレット」に関するケンブリッジ大学についての文献調査は、平成26年度秋ならびに年度末3月に実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の予算の残額\309,278が次年度26年度に繰り越されたのは、上記のオクスフォード大学マートン・カレッジおよびケンブリッジ大学に関する文献調査ができなかったことが理由である。 この差額分については、平成26年度秋あるいは年度末3月に渡英し文献調査を実施することにより、使用する予定である。
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