研究課題/領域番号 |
25370274
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
斎木 郁乃 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90294355)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 南北戦争 / オルコット / ジェンダー / メルヴィル / ホイットマン |
研究概要 |
本研究は、南北戦争中とその前後に書かれた小説、詩、書簡、素描、日記等に表れるジェンダーに関する言説を分析し、戦争という暴力による社会秩序の混乱がジェンダー規範に及ぼした影響を明らかにすることを目的としている。今年度は、1860年代に精力的な執筆活動をし、また自らも看護婦として「戦場の(妙齢の)独身女性」という性的マイノリティの立場で戦争を直接体験したルイーザ・メイ・オルコット (Louisa May Alcott) の作品の中でも、Hospital Sketchesに特に重点を置きながら、作品中に表れる公的空間と私的空間の交錯、母性のレトリックにより隠蔽された性的欲望、「家庭の天使」「息子(夫)の戦死を悲しむ母(妻)」といった女性に期待される類型的な役割に対する反駁などを読み解いた。その研究成果として、平成25年6月4日~7日にワシントンで開かれる第9回国際メルヴィル学会Melville and Whitman in Washington: The Civil War Years and Afterにおいて、“The Rhetoric of Maternity in the Civil War: Melville, Whitman, and Alcott”と題した口頭発表を行った。当学会のシンポジウム発表者及び質疑応答、またElizabeth Renkerの講演から、当時の従軍看護婦の派遣を巡る男性社会からの圧力や、従軍看護婦が婚活を兼ねていた可能性など、新しい情報を得て、発表論文をヴァージョンアップさせることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の主な成果は、オルコットの南北戦争体験について、メルヴィルやホイットマン、また同時代の無名の従軍看護婦の手記と比較しながら、文学的かつ歴史的考察を加えることができたことである。特に、国際メルヴィル学会においては、多くの研究者の意見を聞くことができ、今後の研究の展開の展望を得ることができた。 論文の発表媒体が決まらなかったことが唯一達成が遅れていることであるが、手直しを加え、平成26年度中には発表できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に実施できなかった海外における文献収集をし、オルコットのスリラーと南北戦争に関する資料を検証する。手始めに、“My Contraband”と“Behind a Mask; or , A Woman’s Power”の分析を通してオルコットのスリラーにおける人種とジェンダーにまつわる社会的慣習への破壊的な批判と戦争との関係性の基礎的な議論を構築する。平成25年度に執筆したものを含め、3本程度の論文を学会誌等に投稿する。 計画の変更としては、南北戦争中に北部の女性が果たした役割について、文学作品に限定せずより詳細に検討する必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた海外における資料収集を次年度に延期したためと、注文時期が遅れ、年度末までに納品されなかった物品や洋書があったため。 平成26年度8月にニューヨーク及びボストンにて資料収集のため、旅費として使用する。また、納品が遅れている物品については順次納品される予定。
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