研究課題/領域番号 |
25370275
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
井川 ちとせ 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (20401672)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 英文学 / リアリズム / ミドルブラウ / モダニズム |
研究概要 |
日本英文学会関東支部第8回大会(平成25年11月2日、於日本女子大学)において、英米文学部門シンポジウム「workと20世紀転換期の英米文学」の司会兼講師として「アーノルド・ベネットとclerical work」と題した発表をおこなった。本発表では、ベネットの長編小説5作と文芸コラム、各種労働組合の機関誌や文芸誌の言説に注目し、20世紀転換期の新しい識字層をターゲットとした連載小説のフォーマットについて考察すると同時に、ホワイトカラー労働者に要求される技能がリアリズム小説においてロマンスの媒介として、またプロットを駆動する契機として機能するさまを分析した。 平成26年3月には、論集_An Arnold Bennett Companion: Essays for the Twenty-First Century_. Ed. John Shapcott (Leek: Churnet Valley Books) に "Bennett and the Philosophy of Self-Help"と題して分担執筆した章を校了した。本章は、「ポケット哲学」として知られるベネットの独学者向け指南書が同時代のセルフヘルプ市場に占めた位置や、社会的地位と精神の安定を求めるホワイトカラー独学者を取り巻く多様な言説について考察した。 いずれも、従来研究が比較的手薄であった、リアリズム文学が描きその文学の受容者でもあった下層中産階級のひとびとの経験を、史資料の実証研究と文学テクスト分析を総合するアプローチによって再構築することで、学際的な広がりに貢献し得たものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度におこなった日本英文学会関東支部での学会発表および論文執筆を通じ、史資料の実証研究と文学テクスト分析を総合するアプローチによって、リアリズム文学が、社会の地殻変動の要請するスタイルであることを示せた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年8月末より1年間、イギリスKeele大学への客員研究フェローとしての受け入れが決定したため、平成25年度に実施予定であったイギリス国内の機関が所蔵する史資料の収集については先送りし、平成26年度の渡英後、地の利を生かして集中的におこなうこととしたい。同時にイギリスを拠点とする研究者との情報・意見交換をより積極的におこないたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度8月末より1年間、勤務校よりサバティカルを得てイギリスKeele大学客員研究フェローとして研究に従事することが決定したため、平成25年度に予定していたイギリス国内の機関に所蔵されている史資料の収集を、地の利を生かして平成26年度に集中しておこなうこととし、旅費を支出しなかったため。 Keele大学にて研究を継続し、イギリスを拠点とする研究者との情報・意見交換をおこなうため、おもに旅費として使用したい。
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