研究課題/領域番号 |
25370275
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
井川 ちとせ 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (20401672)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 英文学 / リアリズム / ミドルブラウ / モダニズム / 脱/文脈化 |
研究実績の概要 |
日本英文学会第86回大会において、第4部門シンポジウム「ミドルブラウという名の挑発」の司会兼講師として、「『文学趣味』、自己改善、ミドルブラウ」と題した研究発表をおこなった。また、本研究発表の原稿に大幅に加筆した論考「リアリズムとモダニズム―英文学の単線的発展史を脱文脈化する―」を一橋大学社会学研究科紀要『一橋社会科学』第7巻別冊「特集: 「脱/文脈化を思考する」に寄稿し、20世紀転換期におけるリアリズムとモダニズムの相互作用に焦点を合わせ、ジャーナリズムと学術研究という2つの領域間の交渉を跡づけた。 Edwardian Culture Network主催の会議 "Arnold Bennett and his Circle" では、"Arnold Bennett and the Rising Generation in Imperial Japan" と題した研究発表をおこなった。本発表は、著作の流通と受容のされ方に関する実証研究とテクスト分析とを総合するアプローチによって、学際的研究の広がりに貢献し得たものと自負する。本会議は、9つの研究発表と2つのディスカッション・セッションで構成され、発表者とフロアの参加者との間で活発な議論と意見交換をおこなうことができた。 平成26年8月25日よりKeele大学客員研究フェローとして、附属図書館での資料収集に加え、ほぼ隔週で開催される所属研究科のEnglish Studies Seminarsに参加し、Keele大学外から招かれた研究発表者とも意見交換をおこなう機会を得た。また平成26年10月11日のArnold Bennett Society年次会合において評議委員に選出され、協会の活動の企画運営に積極的に関わることで、ベネットの生地を拠点にベネット研究の振興に務めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度におこなった学会発表および論文執筆を通じて、リアリズム文学の新たな可能性を示し得たことに加え、渡英後の学会活動や、研究者や一般読者との意見交換などを通じ、貴重な視点と新たな知見が得られたため。とくに、Open Universityや学外講座の講師や受講者にインタビューさせていただいたことや、Sheffield Hallam University附属図書館の特別コレクション "Readership and Literary Culture 1900-1950"を、運営を担っているErica Brown博士の案内で閲覧させていただき、博士の蔵書分析プロジェクトを見学させていただいたことなどは、在外研究の機会を得て可能になったことであり、文学テクストの生産・流通と受容の過程、リアリズム文学における現実と表象の関係を再検討するという本研究目的におおいに資するものであった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度8月末までは、引き続きイギリスKeele大学客員研究フェローとして、イギリスを拠点とする研究者との情報・意見交換をおこなうほか、Keele大学附属図書館、Potteries博物館、大英図書館が所蔵する史資料の収集と精査を通じて、ベネットの周辺で活動していた、今日ではほとんど研究の対象とされない作家らの言説を掘り起こしたい。また、平成27年6月6日にはArnold Bennett Society第12回年次大会において研究発表 "Bennett and the Contemporary Japanese Reader"をおこない、その発表原稿に加筆・訂正したものを紀要(『言語文化』)に投稿する。客員研究フェローの任期終了後は、3年間の研究実績を論文にまとめる準備をおこないたい(中央大学人文科学研究所研究叢書として、2017年3月の刊行を目指し、論集の編集を企画中)。
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備考 |
「リアリズムとモダニズムー英文学の単線的発展史を脱文脈化するー」http://hdl.handle.net/10086/27127
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