研究課題/領域番号 |
25370277
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
大野 美砂 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (30337711)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハーマン・メルヴィル / ハリエット・ビーチャー・ストウ / 大西洋奴隷貿易 / ハイチ / リベリア |
研究実績の概要 |
当初の計画では、2014年度はメルヴィルについて、2015年度はストウについて研究をする予定だったが、19世紀アメリカの女性作家やその作品をトランスアトランティックな視点から考察する共著に執筆する機会をいただいたため、予定を少し変更し、2014年度にメルヴィルとともに、ストウについての研究を進めることにした。ハイチ革命やアメリカ植民協会に関する資料、ストウの作品、特に『アンクル・トムの小屋』やそれに関連する批評を読むことに時間を費やした。研究の成果は、論文「『アンクル・トムの小屋』とアメリカ・ヨーロッパ・ハイチ・リベリア」にまとめ、それが論集『越境する女――19世紀アメリカ女性作家たちの挑戦』(開文社、2014年)に掲載された。本論文は、ストウの『アンクル・トムの小屋』をカリブやアフリカを含むより広い大西洋のコンテクストから読み直し、この作品が大西洋の両側で行われていた奴隷制廃止運動の提携関係を強化することに貢献した一方で、ハイチの流れを汲む黒人たちの革命の影響がアメリカの安定を脅かすことを排除し、アメリカ植民協会の政策を推奨することで、大西洋世界における帝国主義的なアメリカの秩序を補強していることを明らかにしたものである。メルヴィルについては、作品や批評を読んだほか、2014年12月の日本ナサニエル・ホーソーン協会東京支部会で、David GrevenのGender Protest and Same-Sex Desire in Antebellum American Literatureのメルヴィルを論じた章についての発表をした。その他2014年度には、21世紀のエコクリティシズムの実践を紹介する特集の総論と、地球空洞説の伝統の中に惑星志向を探る論考の紹介を執筆し、それが出版された(『エコクリティシズム・レビュー』第7号、2014年)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度、ストウについては、カリブ海やハイチ革命、アメリカ植民協会に関する研究書(David GeggusのThe Impact of the Haitian Revolution in the Atlantic Worldなど)を精読することで、ハイチ革命やアメリカ植民協会に関する最新の研究動向を理解するよう努めた。2014年9月にはボストンを訪問し、ボストン公立図書館でカリブ海やハイチ革命に関する資料を入手した。さらに、ストウの伝記や作品、批評を読み、『アンクル・トムの小屋』をカリブやアフリカを含む大西洋のコンテクストの中で捉え直し、論文にまとめた。メルヴィルについては、作品や批評を読み、9月のボストン訪問では、マサチューセッツ歴史協会を利用して、資料を収集した。メルヴィルに関しては、2015年度に研究を発展させ、論文にまとめたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は2014年度に続き、トランスアトランティック研究や大西洋奴隷貿易、マサチューセッツの海や商船に関する研究書を読みながら、特にメルヴィルの作品をトランスアトランティックな枠組みの中で捉え直したいと思う。9月にはボストンを拠点に、ハーヴァード大学図書館、マサチューセッツ歴史協会、ボストン公立図書館などで資料の収集をしたい。また、2015年度は本研究の最終年度になることから、3年間で研究した大西洋奴隷貿易に関する資料を用いながら、ホーソーンの晩年の作品、とくに未完のロマンスを分析することにも時間を費やしたいと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年9月にアメリカに出張したが、交通費や現地での滞在費が予想していたより高額であり、予定より多くの研究費を支出してしまった。一方で、科研費によって購入することを予定していた書籍の一部を、所属大学から支給される研究費で購入することができた。そのため、2014年度の使用額を当初の予定以下に抑えることができた。2015年度にもアメリカ出張を予定しており、そのときにも予定以上の費用がかかることが予想されるため、2014年度の残額は2015年度のアメリカ出張で使用したいと思っている。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度には、図書費として、トランスアトランティック研究や大西洋奴隷貿易、マサチューセッツの海や商船に関連する研究書、メルヴィルの作品、批評を購入することに研究費を使用したい。また、2015年9月に10日間くらいのアメリカ出張を予定しており、その旅費にも研究費を使用したい。さらに、2015年8月に広島で開催されるエコクリティシズム研究学会大会、2015年10月に京都で開催される日本アメリカ文学会全国大会出席のための旅費にも使用したいと考えている。
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