平成27年度は、平成25年度及び平成26年度に引き続き、18世紀から19世紀初頭に出版されたチャップブック関連の書籍の収集に引き続き専念するとともに、それらに収録されている歌、子供向けの文学、バラッド、宗教冊子など、多種多様な形態の作品を整理しながら、作家でもあり書籍業者でもあるWilliam Hone作のパンフレット『The Political House that Jack Built』(1819年)が具体的にどの作品のどの箇所の影響を最も強く受けているのかという点について調査を行うこととなった。これに加えて、William Hone以外の政治パンフレットや児童書籍を中心に資料収集とその精読を行った。具体的には、これも前年度と同じくイギリス・ロンドンのBritish Libraryに赴いて、計20点余の資料収集を行うことができた。しかしながら、3年間という限られた時間内で当初計画していた通りの成果は得られなかった。それはチャップブックが予想以上に多種多様かつ広範囲に存在したからである。また、そのジャーナリズムへの影響についても限定的な視点において確認することはできたものの、ジャーナリズム全体に敷衍して説明することは出来なかった。従って、これらの点については引き続き今後の研究課題とする予定である。 具体的な研究成果については、スケジュールの問題から、残念ながら計画していた国内での研究発表については実現が出来なかった。しかしながら、分担著の形式で自身の研究成果を一冊の書籍にまとめることが出来た。これについては、『詩的言語の諸相 ロマン派を超えて』というタイトルで2016年の前半に出版されることが確定している。
|