研究課題/領域番号 |
25370282
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
岩上 はる子 滋賀大学, 教育学部, 教授 (40184858)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ディキンズ / サトウ / 南方熊楠 / 日本研究 / 日本アジア協会 / 日本文学翻訳 |
研究実績の概要 |
本研究はこれまでに行ったF.V.ディキンズ書簡研究を土台に、最終的にはディキンズに関する初の評伝をまとめることを目標としている。これまで断片的に行ってきた伝記調査で空白となっている部分について調査を進め、全体像の構築に努めている。 本年度は校務が多忙を極め、当初に予定していた「マリア・ルス号事件」関連の資料収集が実施できず、やむをえず研究計画を変更し、以下の二つの課題について研究し、学会において研究発表を行った。 ①シーンドにおけるF.V.ディキンズの活動(ロンドン大学を退職後、ウィルトシャー州のシーンドに隠居したディキンズは日本研究を本格化させた。死亡するまでの15年間の足跡を現地調査し明らかにし、その成果を日本英学史学会関西支部50周年記念大会で報告した。) ②日本文学者としてのディキンズ(日本文学の翻訳家であったディキンズの初期の翻訳のうち、浄瑠璃の仮名手本忠臣蔵について検討し、ディキンズの日本文学への見方を考察し、日本英学史学会第51回全国大会で研究発表を行った。)発表ではミットフォードの英訳「四十七士」と比較し、ディキンズの学術研究をめざした翻訳の特徴を明らかにした。 ディキンズの活動は博物学、植物学、歴史研究、日本語、日本文学など多岐にわたっており、それらをすべて網羅することは今期間中に完成することは困難であり、テーマを絞る必要を感じている。日本学者ディキンズの仕事として、日本文学の翻訳を重点に研究するという今後の方向生が見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年に引き続き附属小学校長の業務が多忙を極め、さらに科研の研究課題以外にも研究課題を抱え、その対応に多くの時間を割かざるをえなかった。そのため、当初に予定していた「マリア・ルス号裁判」に関する調査が十分に進まなかったが、研究課題の順序を入れ替えて、すでに収集済みの資料を整理し今後の研究の方針を再検討した。 雑多な業務の合間を縫って、本研究に関して論文を1本、研究発表を2回行った。なお、研究発表の原稿を大幅に加筆した上で、次年度に学会誌に投稿することを目指し作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、まずはじめに前年度に行った研究発表を土台に研究論文を完成させる。また、サトウ書簡との照合によってディキンズの行動の不明な部分の調査を継続したい。 ディキンズの日本研究に関する活動は多岐にわたるが、もっとも重要なのは日本文学の翻訳紹介を先駆的に行ったことである。本年度は日本文学翻訳について重点的に研究を進めたい。 また最終年度にあたるため、これまでの二期にわたる研究成果を冊子体にまとめることを検討する。研究の深化につれて、さらに追究したい課題が表れ来ており、評伝の完成にはなお時間がかかることが予想されるが、現段階で統合できる部分を発表することによって、今後への見通しをつけたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 校務が多忙のため、国外での資料収集にあてていた出張費用を使用できなかった。また校務繁多により時間の確保が難しく、国内の関連機関での資料収集や学会・研究会への出席が困難であった。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費:ディキンズの足跡調査、原著の確認、関連資料の収集などを主に英国公文書館、大英図書館、ケンブリッジ大学図書館などにおいて実施するための外国出張費を計上する。また国内においては英学史学会、熊楠研究会その他での研究発表、横浜開講資料館、国会図書館での資料収集のための出張費を計上する。 備品費他:デスクトップ・パソコンおよび関連ソフトの購入、関連図書の購入、これまでの研究成果をまとめた冊子の作成費にあてる。
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