研究概要 |
調査範囲の確定のため、Alfred Harbage, Annals of English Drama 975-1700記載の戯曲のうち、題名しか残っていない戯曲、英語以外の戯曲、pageantやentertainmentなどの周辺ジャンルを原則として除き、975-1615年の戯曲をリストアップした。 近代初期については、過去の科研費の成果「パソコン・システムの利用によるエリザベス朝ト書きの研究」、及びAlan C. Dessen and Leslie Thomson, A Dictionary of Stage Directions in English Drama, 1580-1642 、またShakespeare, Marloweのコンコーダンスを参照して予備調査を行ない、letter/letters, paper/papersを検索することで、原則的に支障ないことを確認した。 大英図書館のデータベースLION(Literature on line)で、975-1600年の劇について、ト書きも含めた全テクストから、letter/letters, paper/papersが「文字」や「紙」でなく「手紙」を意味する箇所をすべて拾いあげ、必要に応じ、初期版本の現物・ファクシミリ、EBBOで検証した。結果をエクセルで整理し、modern editionの該当箇所と照合する作業を進め、年度中に7割超の用例をチェックするところまでは至った。 また当時の書簡術、John Browne, The Marchants Avizo (1590), Angel Day, The English Secretary (1599) の必要箇所を大英図書館で複写して資料を収集した。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の遅れを取り戻すため、研究が進めやすい時期に大英図書館での調査を行なうとともに、modern editionとの照合については、昨年度末にようやく研究室に届いた、新刊のBen Joson全集 (Cambridge UP)や、入手しやすくなったFredson Bowers 編のBeaumont and Fletcher劇集などを活用することとする。 当初の予定通り、1615年以降の戯曲の調査に入ると同時に、modern editionsとの照合を終えたデータベースを使い、ひとまずKyd, Spanish Tragedy以前の用例を分析し、論文として発表する。それにあたっては、Thomas E. Jenkins, Intercepted Letters (Lexington Books, 2006), Laura Kendrick, Animating Letter (Ohio State University, 1996)など、文学・演劇における手紙またはwritingの意味を、イギリス文宅に限定しない広い視野から捉えた研究を参照し、手紙の演劇的機能を記述する。
|