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2014 年度 実施状況報告書

英国ルネサンス演劇における演劇的手法としての手紙

研究課題

研究課題/領域番号 25370283
研究機関京都教育大学

研究代表者

太田 耕人  京都教育大学, 教育学部, 教授 (40168935)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード初期近代英国演劇 / 手紙 / シェイクスピア / 劇的手法
研究実績の概要

舞台上で手紙が重要な意味で言及されたり、小道具として用いられるのは、Thmas Kyd, SPANIAH TRAGEDY (1582)が書かれた1580年代からであると推定される。むろんそれ以前にも、14世紀のWakefield Plays (The Towneley Plays) のTLN 73, 128に早くも "letters"への言及がみられ、15世紀のCONVERSION OF ST. PAULにも3例が見つかり、Henry Medall, FULGENS & LUCRECEになると「手紙を送る」(sendyth you a letter)といった表現が現れる。しかしそれはむしろ、識字率の向上とともに、通信手段として手紙が見慣れたものになった証拠であり、必ずしも演劇表現として手紙の手法が発展したわけではない。
1520年代以前は、舞台での手紙の言及・使用はきわめて散発的である。たとえば、John Heywood, THE PARDONER AND THE FRIAR (1527)には3度手紙が出てくるものの、同作家の他の作品には一例も見られない。むしろ、この時期に目につくのは、Nicholas Udall,THIRSITIES (1537)での手紙への言及であり、劇での手紙の使用が翻訳の上演によって推進された可能性を示唆する。翻訳作品では、IPHIGENIA IN AULIS (1558)も20か所近くで手紙に言及しており、この仮説の裏付けになるかもしれない。
現存する劇テクストの古版本のテクスト(ト書きを含む)を1610年(Barbage, ANNALS, 3rd ed.に拠る)まで調査した限りでは、1580年代から劇中での手紙の言及・使用は拡大し、用例も増加する。それにしたがって、劇中で手紙が果たす機能は誤配、盗難、書き換え等によって、複雑化していく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

この数年で、British Libraryが公表したESTCによって、古版本に言及する際にはESTC番号を明記し、modern editionsではなく、EEBOで画像を参照し、該当箇所のsignatureを記録することが標準となったため、本助成金を受ける前にすてに調査していたデータを、すべて再確認しなければならなくなったため、想定したよりもはるかに時間がかかることになった。
勤務校ではEEBOが参照できないため、国会図書館関西館に出かけなければならないが、そのための時間が校務のために制限された。
しかしながら、以前の調査データを再照合した結果、記録されていた箇所はほぼ正確であったが、採取すべき箇所が洩れている例がいくつか見つかり、調査結果の正確さを高めることができた。

今後の研究の推進方策

データの正確性が確認された部分から、文献のSTC番号、該当する頁のsignature、可能な場合は参照したmodern editionsの頁番号、テクストからの該当部分引用を、とりあえずexcelを用いてデータベースを構築していく。それとともにデータを採った版本、近代版本を目録化する。
その過程で、Kyd "Spanish Tragedy"からシェイクスピアの成熟期喜劇が書かれる1600年までを目安として、劇的手法としての手紙の導入を2本の論文としてまとめて、順次発表する予定である。その上で、本研究終了時には、構築されたデータベースに基づいて、手紙の劇的仕様の時系列での発達を分析し、研究成果として公表する。
遅れている調査については、BLでのESTC利用とそれとリンクしたEEBO閲覧によって効率化することができるので、勤務校からサバティカル研修を取得して、ロンドンで約1ヶ月滞在研究をすることで挽回する予定である。また、EEBO editions (ProQuest)で主要なタイトルが入手可能になり、作品の梗概についても、Martin Wiggins (ed.) BRITISH DRAMA (Oxford)の刊行が完成したので、作品全体のなかで手紙使用の場面の理解が容易になった。

次年度使用額が生じた理由

(1)構築すべきデータベースの容量によって、購入すべきパーソナルコンピュータを見定めるため、購入を最終年度にしたため物品費が使用されていない。
(2)最終年度に、勤務校からサバティカル研修を許可されたため、比較的長期の在外調査がまとめてできることが判明したので、そのための費用を最終年度に回した。

次年度使用額の使用計画

大きく以下の4つの項目において使用する。(1)5月20日~6月17日に大英図書館(ロンドン)及びケンブリッジ大学図書館にて調査(2)8月下旬~9月上旬に大英図書館(ロンドン)にて、古版本中心に最終調査。(3)Epsonのタワー型デスクトップパソコンの大容量の機種を5月に購入。(4)EBBO editionsで必要な版本のファクシミリを購入。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件)

  • [雑誌論文] 反復と古典2015

    • 著者名/発表者名
      太田耕人
    • 雑誌名

      テアトロ

      巻: 903 ページ: 44-46

  • [雑誌論文] 鮮やかなる再読2014

    • 著者名/発表者名
      太田耕人
    • 雑誌名

      テアトロ

      巻: 894 ページ: 41-43

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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