研究課題/領域番号 |
25370284
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
齊藤 美和 奈良女子大学, 研究院人文科学系, 准教授 (90324962)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 伝記、自伝 / 偉人伝 / 聖人伝 / 頌詩 / 女性 / イギリス |
研究実績の概要 |
平成26年度の計画に基づき、英国(主としてBritish Library)において文献の調査・収集を行い、近代に書かれた女性の自伝にみられる自己の問題を中心に研究を進めた。特に十七世紀の女性には珍しく、出版を前提に自伝を執筆したMargaret Cavendishに着目し、自著の巻末に付したこの女性作家の〈わたし語り〉とロマンス作品との相関関係を考察することで、作家マーガレットが自伝的言説とフィクションとを織り合わせていかに自己の成型・顕示を行っているかを考察した。この研究は、著書(共著)『十七世紀英文学を歴史的に読む』(金星堂、2015年5月出版予定)において「自伝風ロマンス、ロマンス風自伝ーマーガレット・キャベンディッシュの〈わたし語り〉-」として発表することになっている。さらに、近年多様な学問分野において女性の自伝を対象にした研究が盛んであることから、基礎文献資料としてこれに資するよう、本自伝を翻訳し、その前半を2014年12月に『欧米言語文化研究』で公表した。本翻訳の後半は27年度に発表を予定している。本科研費課題は、女性の偉人伝について、〈伝記的小説〉、〈頌詩〉、〈聖人伝〉の三つの柱を中心に進める計画であったが、マーガレット・キャベンディッシュの自伝研究は、この三つのうちの伝記的小説を念頭において進めたものである。残りの〈頌詩〉および〈聖人伝〉については、現在、John Donne, Anniversariesを無名の少女の偉人伝と捉えた論考をまとめており、この論考の中で、処女聖人伝の伝統についての考察を含む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度は、H25年度に行った調査・研究を踏まえ、当初計画していた女性の自伝についての考察をMargaret Cavendishの自伝を中心に行い、その成果を著書(共著)で公表し(H27年5月出版予定)、加えて本自伝を翻訳してその前半を公表した(H26.12)。 さらに次年度に向け、宗教的、政治的観点から女性の偉人伝についての研究を進め、9月に渡英しBritish Libraryにおいて文献の調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるH27年度は、女性の偉人伝について聖人伝と頌詩の伝統から考察するという研究課題を進める。具体的には、聖人伝の観点からはJohn Donne, Anniversariesを対象に選び、研究論文として発表する予定である。さらに頌詩の観点からは17世紀に著されたエリザベス一世の伝記を取り上げ、政治的背景に照らして「女」王の伝記の特質と伝記というジャンルに果たした役割を考察、その成果を公表する予定である。
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