近代英国において、伝記は社会的・政治的・宗教的に重要な役割を担う文学ジャンルであった。本研究は、女性の伝記、特に偉人伝に焦点を合わせた。女性の伝記研究といえばこれまで日記や書簡といった私的な自伝的書き物の調査が中心であったが、本研究では、伝記の中でも特に公的・社会的性質の強い偉人伝を中心に据え、公に出版することを目的に書かれた伝記を研究の対象とし、女の一生がどのように記録され、讃えられたかを、主として伝記的小説、頌詩、聖人伝の3つの観点から考察することによって、書くのも書かれるのも主として男性であった伝記という文学ジャンルに占める女性の位置を明らかにした。
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