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2014 年度 実施状況報告書

『初期英国演劇記録』分析による英国劇団史研究

研究課題

研究課題/領域番号 25370286
研究機関九州大学

研究代表者

太田 一昭  九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (10123803)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワードREED / 初期英国演劇記録 / 尺には尺を / 姦淫 / 妊娠 / 公開処罰 / 地方巡業 / 支払記録
研究実績の概要

原著論文1編'REED(Records of Early English Drama)を読む(1)――"Carting"とMeasure for Measure――'を刊行し、オクスフォード、ケンブリッジ、ヨーク3地域について、諸劇団の地方巡業関係資料を作成した。
『尺には尺を』においては、姦淫の罪を犯した者が危うく死刑に処せられそうになる。シェイクスピア時代には売春宿があり、姦淫を行う者は珍しくなかった。しかし現実に処罰されたのは彼らの一部である。性的な逸脱行為は当時、容認あるいは黙認されていたとも言える。そのような現実に鑑みれば『尺には尺を』の世界はかなり極端な世界である。しかし『初期英国演劇記録』(REED)の記録に見えるように、決して架空の出来事ではなかった。その記録はまた、性的逸脱行為がすべて処罰されるわけでなく、許容範囲を超えて逸脱すれば公開処罰(Carting)の対象となったことを示している。そのように処罰されるかされないかの岐路となったのが、たとえば婚姻外性行為という逸脱行為が可視化される妊娠であった。シェイクスピアは、『尺には尺を』において、婚外交渉の結果としてあやうく売笑婦の烙印を押されそうになる女性たちを舞台に登場させたが、そのような芝居の成立に与って力あったのが、ドーヴァーの資料に端的に現れているような、婚姻外性行為を少なくとも建前において強く忌避する当時の社会的文化であった。
上記3地域について、16世紀中期から17世紀中葉の劇場閉鎖時までに当該地を訪れた巡業劇団に対する、市・町あるいは大学あるいは教会による支払い記録を通時的に整理し、表を作成した。この資料は未刊行であるが、地方巡業劇団の活動とそれに対する地方自治体、大学、教会の対応を分析するための基礎資料となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

原著論文1編を執筆したが、地方巡業関係資料の作成・整理・分析が遅れている。当初の予定では、平成26年度末までに、ルネサンス期イングランドの全ての地域について、劇団別地方巡業回数、対劇団(上演料あるいは退去料)支払い記録、劇団別上演禁止記録を年代別に調査し、統計表を作成し、その統計表に基づいて、項目別に経年変化の分析を行う予定であったが、膨大な資料渉猟に思いのほか時間を費やし、資料の整理と分析を十分に行うことができなかった。

今後の研究の推進方策

当初の計画では、本課題研究期間内に、ロンドンにおける劇団の活動を地方巡業との関係において分析し、さらに、役者以外の旅芸人の記録をサンプル調査し、演芸一般における役者の相対的地位を推定し、包括的な劇団史を執筆する予定であったが、今後は、ロンドンの演劇活動と地方巡業の関係についての論考は継続的な研究課題として、『初期英国演劇記録』(REED)の実証的分析を通して、地方巡業劇団の活動の見取り図を叙述することを最優先課題として研究目的の達成をめざす。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画では、平成26年度に渡英し英国国立図書館等において資料収集等の調査研究を行う予定であったが、計画していた海外出張が筆者の所属する機関の公務と衝突し、海外調査研究を行うことができず、海外出張旅費として留保しておいた予算が未使用となり残余が生じた。

次年度使用額の使用計画

平成27年度の夏季休暇期間中に渡英し、研究調査を行う予定である。また国内のシェイクスピア研究者、演劇史研究者と意見交換を行い情報収集をするために、英文学会、シェイクスピア学会参加に加えて、通常東京地区で開催されるエリザベス朝研究会への複数回の出席を計画している。前年度旅費充当予定であった残余金を、これらの出張旅費に充てることとする。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] REED(Records of Early English Drama)を読む(1)――“Carting”とMeasure for Measure――2015

    • 著者名/発表者名
      太田一昭
    • 雑誌名

      英語英文学論叢

      巻: 65 ページ: 1-15

  • [学会発表] REEDを読む2014

    • 著者名/発表者名
      太田一昭
    • 学会等名
      九州シェイクスピア研究会
    • 発表場所
      西南大学
    • 年月日
      2014-09-19

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公開日: 2016-05-27  

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