研究実績の概要 |
1. 『初期英国演劇記録』(REED)の資料に基づき、Oxford, Cambridge, Kent, Coventry, Cheshire, Yorkにおける対巡業劇団支払い記録等の詳細な統計資料を作成した(未刊行)。 2. 上記の記録と比較参照するために、1594年~1616年の宮廷の対劇団支払い統計資料及び1976年~1616年の宮廷上演統計資料を作成した(未刊行)。 3. REED記録集に見える資料に即して『尺には尺を』を分析し、初期近代英国における性的逸脱行為の文化的・社会的意味を分析した(原著論文、既刊)。16-17世紀イングランドにおいて演劇は宮廷祝典局長の管理下にあったが、祝典局長の演劇の許認可権は劇団の地方巡業にまで及んでいたことを、REEDの関係記録を参照しつつ指摘した(総説、既刊)。 4. REEDの記録及び宮廷関係資料の分析を通して、エリザベス女王一座と宮内大臣一座・国王一座が特権的な劇団であったことを明らかにした(学会報告、既刊)。 5. 上記1~4の調査・論考を通して、地方自治体の巡業劇団に対する姿勢が大きく異なること、対劇団の対応は時代が下がるにつれて厳しくなっていくこと、女王一座とシェイクスピアが所属していた宮内大臣一座・国王一座は他と区別される「特権的」な劇団であったこと、さらに地方の演劇関係資料にロンドンの演劇(たとえばシェイクスピア劇)を読み解く鍵となる資料が存在することを、より具体的に明らかにすることができた。
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