研究課題/領域番号 |
25370288
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研究機関 | 山形県立保健医療大学 |
研究代表者 |
梶 理和子 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 准教授 (60299790)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ジェンダー / 親密圏 / 公共圏 / 共感 / 規範 |
研究実績の概要 |
25年度計画による文学作品、科学的・文化的歴史資料の収集、分類、整理、ならびにジェンダー批評、公共圏研究を中心とした女性リバタインにかかわる理論的基盤の整理といった成果を踏まえて、次の3点から具体的なテクスト分析をおこなった。1. 男性作家による女性リバタインに関する言説分析:William Wycherleyや、William Congreveといった長い18世紀の男性(劇)作家によるリバタイン言説を、前年度の成果に基づき再検討を加えつつ、女性リバタインに関する言説の持つ意味に注目した。その際に、女性リバタインの批判・排除の言説だけでなく、それを利用・支援する言説を抽出した。2. 女性作家による女性リバタインに関する言説分析:Aphra Behnや、Susanna Centlivreら、長い18世紀の女性(劇)作家によるリバタイン言説を、前年度の成果に基づき再検討を加えつつ、女性リバタインに関する言説の持つ意味に注目した。その際に、女性リバタイン表象がどのように作家としての自己形成の問題と結びつき、さらに、そこから女性の連帯の(不)可能性とどう結びついていたのかを検証した。3. 実在する女性の放蕩に関する言説分析:長い18世紀における、作家ではない女性(たとえばチャールズ二世の愛人たちや、名誉革命以降の貴族の女性等)にまつわる言説を、批判、排除という観点からではなく、親密圏の形成の契機として注目し、その可能性を考察した。以上のテクスト分析をおこないつつ、国内外の一次資料等の収集および分類・整理を継続しておこなった。また、成果の一部を発表し(十七世紀英文学会東北支部)、その際の意見交換にて、さまざまな示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の成果を踏まえて、詳細なテクスト分析(特にリバタイン表象の現実と虚構のレベルでの考察、再評価)をおこなったことで、女性リバタイン言説と親密圏の形成に関する研究の最終的な方向性が確定した。また、国内外の17世紀・18世紀研究者らとの交流によって、新たな視座を得たことや、研究成果の一部を発表したことで、本研究はおおむね順調に進展していると考える。なお、国内外の一次資料等の収集および分類・整理を前年度からおこなっているが、データベース化(して活用しやすいテクスト・資料の充実をはかる)という点については、やや不十分の感があり、今後も継続しておこなう。
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今後の研究の推進方策 |
25年度・26年度計画の理論的成果に基づいて、女性リバタインに関する資料等を用いた具体的なテクスト分析を組み立て、女性リバタインと親密圏の形成についてまとめる。長い18世紀の女性リバタインをめぐる言説に基づく親密圏と公私空間の関係性を検証する研究会を開催し、当該分野の研究者の意見を得るとともに、議論を行い、最終年度の研究課題を確認する。その際に、女性リバタイン言説がどのように形成・流通・受容されたかを考察する。それと平行して、親密圏が公私空間に与える影響を、理論研究に基づくテクスト分析により、考察し、またこれらの見直しをはかる。そのために、当該研究の専門知識を有する研究者との交流によって、作業過程の理論、テクスト分析に対する批判的検証を依頼し、新たな視座を共同作業によって提示することを試みる。以上のことから、女性リバタインをめぐる言説の生産・流通・需要の過程を明らかにすることで、異端(とされる人々・登場人物)の共感に基づく親密圏の形成という観点から、公私空間の変化について分析をおこなう。それによって、性的言説に限定しない、放蕩に関する言説を軸に、主体と共同体の変容の過程を学際的に検証する。
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