本研究はアフリカ系アメリカ文学における東洋趣味を大西洋奴隷貿易の問題を鑑みながら明らかにしようとする試みであった。19世紀後半から20世紀初頭の欧米で、日本の工芸や美術品がもてはやされ、ジャポニスムという現象が起こったが、白人芸術家のみがそれに夢中になったのではない。アフリカ系アメリカ人作家たちもジャポニスムに敏感に反応したのである。しかしアフリカ系アメリカ人作家はオリエンタリズムの機構に内在する人種差別に気がづいていた。ネラ・ラーセンの『流砂』はその点を批判的に描きだしている。リチャード・ライトの俳句も、その抗議的側面を見ていかなければならない。
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