1962年に英国から独立したトリニダード・トバゴ共和国では、独立に至る過程で交わされた政体論に絶えず文化論が付随していた。本研究では、当時C. L. R. ジェームズとエリック・ウィリアムズを中心におこなわれた、国家における文化の位置づけに関する考察を、現在のトリニダード文化に照らし合わせて検証した。 調査と分析を経て、ウィリアムズが異人種間調停として導入した仮装(マス)と音楽(パン)が階級的差異を捨象したために、現在はそれらが観光化として否定的な効果を及ぼすいっぽうで、階級差の問題を強調したジェームズの論点が、現代のグローバル化社会における諸問題への解決に対してより有効であることを究明した。
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