現在の「世界文学」が越境性やマイノリティを重視することに鑑み、ウィリアム・フォークナー文学の世界性を、彼の影響を受けた日本作家の大江健三郎や中上健次との関係を中心に解明した。フォークナーは白人南部作家として黒人に対しては主流派、北部に対してはマイノリティという複雑な立場にある。大江、中上それぞれも日本の父権社会に対し微妙な立ち位置にあるが、フォークナーの南部父権社会との葛藤は、彼らの文学的戦略にも大きな影響を与えている。さらに第二次世界大戦後のフォークナー来日が当時のアメリカの国家戦略に沿うことから、フォークナーとアメリカ文化の世界戦略と日本についても新たな知見を提出した。
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