本研究は、環境保護と観光開発の両立を目指す英国湖水地方の文化的景観が、19世紀の文学観光を通してどのようにして作られたかを検証したものである。ワーズワス作品のガイド的役割という視点からの再解釈、またこれまで文学研究では見過ごされてきた旅行ガイド、旅行記事、挿絵などにおける湖水地方表象の検証を通して、ワーズワスの自然に対する感受性がいかにして旅行者一般に受容され、環境保護的な思想が広まったかを明らかにした。この研究によって、湖水地方の文化的景観の特徴、これがどのように形成され英国民の文化遺産となっていったか、その過程においていかにワーズワスが重要な役割を果たしたかが明らかになった。
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