本研究はアンテベラム期米国の小説群を中心としたテクスト分析を通して、家庭性(domesticity)という概念による19世紀アメリカの女性文化の形成を検証し、同概念の意義や役割を包括的に捉えることを目的とした。主として当時の重要な家庭性理論家であったセアラ・ヘイル(Sarah Josepha Hale, 1788-1879)の小説を取り上げ、ヘイルの企図する家庭性がジェンダー・人種・階級の問題と関わりながら「女性の領域」を拡大させ、法的・政治的権利を持たない白人女性たちに「女性市民」として社会での積極行動を可能にさせる大きな原理であったことを明示している。
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