研究課題/領域番号 |
25370305
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
佐々木 真理 実践女子大学, 文学部, 准教授 (30297436)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イーディス・ウォートン / ヴァーノン・リー / 世紀転換期 / 女性作家 |
研究概要 |
平成25年度は、イーディス・ウォートンの初期作品におけるイタリアを題材とする旅行記、エッセイ、および小説に焦点を当て、ウォートンが強い影響を受け、その後親しい交友関係を築くようになったヴァーノン・リーの著作及び多方面にわたる彼女の活躍が、ウォートンの作家としての自己形成にどのように関わっていたのかを明らかとした。 具体的には、ウォートンの"Italian Villas and Their Gardens"(1904)及び"Italian Backgrounds"(1905)といったエッセイ集とリーの代表的なエッセイを比較し分析することで、独特の文章とスタイルでイタリアの歴史と文化を語るリーの手法と思想にウォートンが大きく影響されたことを検証した。イタリアのさまざまな様式の庭園を分析した"Italian Villas and Their Gardens"からは、リーの芸術観と美学が、イタリアの庭園文化の鑑賞方法とその美の評価に対するウォートンの姿勢を決定づけていた。また、語りの技法という観点では、ウォートンが過去を語る上での技法が、リーが得意とした技法を受け継いでいることも、考察の結果論証できた。さらに、二人が用いた技法から、リーとウォートンには伝統と文化に対する共通する認識があるということ、だが同時に、ウォートンはその技法をリーとは異なるテーマを追求するために用いるようになり、二人の認識には違いが生まれていったこと、その過程には、世紀転換期における女性知識人に求められるあり方が変容していった経緯が関わっているという結論が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の第一の目的としていた、ウォートンの初期作品におけるイタリアを題材とする旅行記、エッセイ、および小説において、ウォートンが強い影響を受け、その後親しい交友関係を築くようになったヴァーノン・リーの著作及び多方面にわたる彼女の活躍が、ウォートンの思想にどのように関わっていたのかというテーマについて、十分な調査と考察を行うことができた。また、その考察の過程で、本研究の第二の目的で対象としている、ウォートンのフィクションにおいて用いられている技法について、考証を深める糸口を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究の第二の目的である、リーが得意とし、ウォートンも数多く発表することとなった幽霊を題材とするフィクションに焦点をあて、それらの物語における幽霊と女性の表象を分析することで、第一の目的として考察したウォートンとリーの関係性に対する考察をさらに深めたい。それによって、ウォートンの時代にあって変容した女性の知識人の在り方がウォートンに与えた影響と意義について明らかとしたい。このような分析によって、リアリズム小説家として知られるウォートンの隠された一面と思想の一端も見えてくるだろうし、世紀末の超常現象を扱った小説のブームというより広い背景のもとでウォートンを考察する視座を獲得することにもつなげていきたい。
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