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2016 年度 実績報告書

黒人文学の興隆をめぐる、アンダソン、ヘミングウェイ、ウィンダム・ルイスの相克

研究課題

研究課題/領域番号 25370308
研究機関中央大学

研究代表者

中村 亨  中央大学, 商学部, 教授 (70328029)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード人種
研究実績の概要

ヘミングウェイの未完の小説の一部で、短編 "The Porter"として死後に出版された物語を、その草稿にも目を通し出版稿との比較も踏まえて検討した。その結果、死後出版された部分のほとんどが草稿ではヘミングウェイ自身の手によって削除されていたこと、また出版された物語とはかなり違った話に書き換えられていたことが判明した。草稿における書き直しのプロセスを検証して分かったのは、ヘミングウェイがアフリカ系アメリカ人の表象をめぐって試行錯誤と逡巡を繰り返していたこと、アフリカ系アメリカ人の作中人物を何とか自己主張する主体として提示しようとしながら、最終的にそれを断念しほとんど物言わぬ脇役に変えてしまったことである。ヘミングウェイはアフリカ系アメリカ人の仮ペルソナを通して、戦争のトラウマを隠しながら生きる自らの苦境を表現しようとしていたのではないかと考えられる。研究の成果は2016年国際ヘミングウェイ学会で発表した。

また、ヘミングウェイの文学における白人/黒人という二分法の屈折とねじれを、処刑現場を題材とした作品群と小説Farewell to Armsを接続させるかたちで考察した。自己の感情と衝動の抑制という白人男性に課される規範を極端なかたちで実演する男たちを提示することによって、ヘミングウェイはその規範のいびつさを暴露していることを論じた。またそうした男達は、黒人のステレオタイプを誇張した実在の黒人コメディアンをモデルに、その演技を白人に転用するかたちで創造されたのではないかという可能性を探った。研究の成果は2016年日本ヘミングウェイ協会全国大会シンポジウム「ヘミングウェイの言葉と白人/黒人・異邦人」で発表した。
発表内容はシンポジウムの質疑応答を基に再考し、研究論文にまとめた。書き上げた論文は日本ヘミングウェイ協会の学会誌『ヘミングウェイ研究』に掲載されることが決まっている。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 「白人らしさ」の仮面ー自己抑制と処刑、『武器よさらば』2017

    • 著者名/発表者名
      中村亨
    • 雑誌名

      ヘミングウェイ研究

      巻: 18 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] 「白人らしさ」の仮面―自己抑制と処刑、『武器よさらば』2016

    • 著者名/発表者名
      中村亨
    • 学会等名
      日本ヘミングウェイ協会第27回全国大会
    • 発表場所
      関西学院大学
    • 年月日
      2016-11-19
  • [学会発表] "The Porter": Editor's Alterations and the Intersection of Race and Sexuality2016

    • 著者名/発表者名
      Toru NAKAMURA
    • 学会等名
      Biennial International Hemingway Conference
    • 発表場所
      Oak Park, Illinois
    • 年月日
      2016-07-21
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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