1712年出版のAmbrose Philipsの “A Lady Transformed into a Tea-Pot”という詩では、男性たちをとりこにする地上の女性が天上の女神たちの嫉妬によってティーポットに変身させられる。これは、Alexander Popeの “The Rape of the Lock” における“The Cave of the Spleen”の場面に現れるティーポットを想起させる。本研究は、18世紀英文学における、女性のsexualityと陶磁器との関係をテーマとしているが、本年度は、「ティーポットに変身する女性」のイメージに焦点をあてた。なぜ女性はティーポットに変身するのか。PopeのBelindaも、Philipsの魅力的な女性も、その性欲の代償としてティーポットに変身する。女性を「脆き器」にたとえたのは聖書である。「脆いがゆえに大切にされなければならない女性」は、18世紀において、「男をいつでも受け入れる器としての女性」のイメージに凌駕されてゆく。本研究者は、ティーポットまたは陶磁器のイメージが女性の脆さと美しさを表すと同時に、性欲をも表す両面価値的なイメージとして18世紀英文学において表現されることに着目し、上記の2つの詩を中心としながら様々な文学作品において、女性のメタファーとして使用される陶磁器のイメージを研究した。その過程で気が付いたのが、女性は陶磁器にたとえられるだけではなく、陶磁器を収集することにも熱意を燃やすということである。消費の主体であると同時に消費する物品そのものでもある女性。欲望の主体と客体の重なりは論理的矛盾というよりは、女性の性欲の自己中心的性の表現となると解釈した。しかし重要な点は、主体であれ客体であれ、それは男性の構築物であるということである。
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